「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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大江戸物語3

裏の依頼は数ヶ月に1回、あるかないかだ。
年の瀬も押し迫ってきたころ、その依頼があった。
「ああこれ、知っている。千人切りでしょ」
日本橋で夜更けに大男が立ちふさがり、勝負をかけてくる。負けたら刀を取られてしまう。
「武蔵坊弁慶みたいね。左近、あなたが義経になる?」
綾女に言われて、左近は夜中に橋のたもとに立った。
「あ・・・うう・・・」
一人の男が頭を押さえてうずくまっている。腰に刀は差していない。
「あ、頭が…頭が割れるようだ、蘭丸」
そばに立つ美青年。
「殿、それでよいのです。それで」
「あ、あ、頭がー!!がぁぁぁぁぁぁっっ!!」
悲鳴とともに男が巨大な化け物へと変貌を遂げた。左近はあまりの巨大さにあとずさりをした。抜刀すると怪物は光りものをめがけて飛び着いてきた。
「う、わぁぁぁっ」
伸びた怪物の腕を切ろうとするが、こんにゃくのように歯ごたえがなく切れない。
「左近!」
綾女が小太刀を持って駆けつけてきた。
「この光はどうだ、化け物」
青く輝く小太刀。その光は化け物でも痛手を負ったかすかな記憶が呼び起こされ、頭を抱えたまましぼんでいった。
「ちっ、なんてだらしない。この勝負、預けた!」
美青年はしぼんだ化け物を片手で抱き上げると、つむじ風を起こして姿を消した。
「左近、大丈夫か、左近」
抜刀したまま立ちすくんでいる左近に、綾女は駆け寄った。左近は刀を鞘におさめた。
「綾女、小太刀のその光は?」
「富山のホタルイカだ。青く光ってきれいだからな。夏に取って自分で色を出してみたんだ。青い光は感情を鎮静化する作用があるからな、試してみて当たりだった」
「綾女に助けられたな」
綾女は笑って首を横に振った。
「ふたりで、ひとつでしょ?」
左近は綾女を抱きしめた。そのふたりに雪が降りかかりはじめていた。

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