家に帰ると、父親が綾女をやさしく出迎えた。近くに住んでいる叔母の佳代も来ていた。
「左近の父です。これは私の妹の佳代」
「こんばんは、佳代です。左近から話を聞いていますよ」
「夜分にお邪魔してすみません・・」
綾女はただただ恐縮していた。
叔母といっても佳代はまだ20代半ばだった。綾女をやさしく見守っている。
「お腹すいたでしょう?今日は私が作ったのよ」
「少しは上達したのか?」
「失礼ね、兄さん。洋食と中華なら左近に負けないわよ」
食卓においしそうな料理が並ぶ。
「いただきます」
久しぶりの食卓。もう何年、家族で食事を摂っていなかっただろうか。綾女は胸がいっぱいになり、涙が出そうになった。いつも父親に怒鳴られながら酒の肴を作り、まともに食事も摂れなかった。気に食わないと父親はお膳をひっくり返し、綾女は泣きながらいつも片付けていた。
食事が済み、綾女は佳代と一緒に片付け物をしていた。
「綾女さんは、しばらくここにいた方がいいわ」
佳代の声に、考え事をしていた綾女は我に返った。
「でも、ご迷惑じゃ・・」
「大丈夫よ。それより身体は?」
綾女はびくっと身体を震わせた。
「ごめん、私看護師なの。傷があると知ったら放っておけないのよ。ましてやこんな若い子」
「すみません」
「いいのよ。辛いかもしれないけれど、身体、一緒に治していかない?」
- 現代版
- 22 view
この記事へのコメントはありません。