君を慕いて・・ 86 view 君を慕いて・・1 皐月、菖蒲が咲く頃。15歳の綾女は、明日嫁ぐ。代々香澄の里に伝わる御神刀を守る家柄の綾女は、いわゆる”お姫様”である。忍びの技に秀で、容貌にも恵まれ、何も望…
君を慕いて・・ 48 view 君を慕いて・・2 眠っていた綾女は、外のただならぬ気配に目が覚めた。すばやく身支度を整えると、外に炎が見えた。「綾女、いるかっ」進之助の声が聞こえ、外に出る。すでに我が家は火…
君を慕いて・・ 51 view 君を慕いて・・3 どれくらい駆け続けただろうか。川を見つけ、綾女はやっとその足を止めた。振り返ると木々の向こうに赤い空が見えた。「兄上、高久様・・」深い絶望が襲ってきた。あ…
君を慕いて・・ 61 view 君を慕いて・・4 安土襲撃前夜。綾女は冬に訪れた鳳来洞の出来事を思い出していた。初めて触れた男の体温。綾女の指がそっと自分の唇に触れた。「どうした、綾之介殿」刃の手入れ…
君を慕いて・・ 57 view 君を慕いて・・5 龍馬、左近、綾女の3人が傷を癒してから葉隠れに戻ったのは、もう秋も深くなる頃だった。「遅かったので心配していましたのよ。ご無事で何よりです」桔梗が出迎えた。…
君を慕いて・・ 53 view 君を慕いて・・6 夜も更け、その場は解散となった。「綾之介殿」足早に自室へ戻ろうとした綾女を、高久が呼び止めた。「同郷の方に会えるとは奇遇です。少し話をしませんか」高久は…
君を慕いて・・ 50 view 君を慕いて・・7 綾女は自室で眠れずにいた。何度も寝返りを打つ。再開したときの感情は、嬉しいよりも戸惑いのほうが大きかった。忘れていたわけではない。色々なことがありすぎて、…
君を慕いて・・ 77 view 君を慕いて・・8 左近は道場に出かけた。なまっていた体を動かそうと思った。そこには高久がおり、木刀を振っていた。綾女と同じような太刀筋。やはり香澄の人間だ。「そこにおられるの…
君を慕いて・・ 63 view 君を慕いて・・9 綾女は自分のくしゃみで目が覚めた。暖かかった縁側は翳ってきていた。どれくらい眠っていたのだろうか。「あ・・」掛け物は左近のものだった。体を起こすと左近が歩…
君を慕いて・・ 104 view 君を慕いて・・10 翌日も天気はよく、綾女は昨日と同じ場所で柱にもたれかかっていた。左近の部屋のすぐ外だ。左近は部屋を出ようとしたが、そのまま中にいた。「こんなところで。風邪を…