体力の消耗と出血過多、さらに心臓の機能がだいぶ弱っていた。
綾女は眠り続けている。
「11人の子を成したのです。体には大変な負担がかかっていたのでしょう」
姉川がいたわるように綾女を見つめていた。
左近がそばで綾女の手を握りしめている。
「綾女には大きな負担を強いてしまった。世継ぎを作るため、側室も持たずに次々と生ませてしまった」
姉川は頷いた。
「でもそれを御台様は望まれたのです。お世継ぎのことをとても気にされていました」
「幸い、みな健康に育っている。綾女、末の子の成長を共に見届けてくれないか」
綾女は答えずに昏々と眠り続けるだけだった。
年が明けても綾女は変わらなかった。
左近は子供たちをすべて呼び、綾女の寝所に集めた。
みな左近と綾女の子だけあって、幼いながらも美貌の片鱗を見せている。
綾女はきちんと髪を梳かれ、化粧も施されて目を閉じていた。
「綾女。末の子も一つになった。皆も大きくなった。目を開けて見てやってほしい」
五女が左近に問う。
「父上。母上はどんなお声なの?」
長女が代わって答える。
「女の方にしては少し低い声よ。でもよく通るの」
「そうなの?」
子供たちの声に導かれたのか、綾女の閉じていた目が開いた。
「綾女」
左近がにじり寄る。すぐに医師の診察を受け、容体が落ち着いているのを確認した。
「ですが、心臓の機能は変わりません。無理をして動くと負担がかかります。寝たり起きたりの生活になるでしょう」
「ありがとう・・ございます」
綾女の優しい声が久しぶりに聞こえた。
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