「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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つなぎとめて3

左近の体力が落ち着くまで、数日ふたりは空き家に滞在した。
妖刀が結界になり、誰も何物も近づいてこない。ふたりが静かに癒える空間だった。
眠っている綾女を左近が抱き寄せ、腕の中に包み込んだ。綾女を見ると、どうしても白無垢姿が浮かんでしまう。自分の手元にずっと置きたい。
あれから何度もふたりは唇を合わせた。徐々に熱く溶けるような口づけとなり、綾女は瞳が潤んでいた。
「相思相愛」
ふと言葉に出して、左近は嬉しくなってしまった。ぎゅっと綾女を抱きしめる。
「痛い、痛いぞ左近」
綾女がもがいた。
「綾女。俺の願いを聞いてくれるか」
綾女が少し怯えた目で左近を見上げる。何を言われるのか、ものすごく不安そうだ。
「俺と、夫婦になってほしい」
「え?」
明らかに綾女は動揺し、不安倍増の顔になった。恥ずかしさと不安とが入り混じった顔。
「め、夫婦?」
「ああ。俺は生涯お前とともに生きたい。お前が俺の命をつなぎとめてくれた。その時から俺は決めていたんだ」
「左近、左近」
綾女が左近の言葉を止めた。
「待って。いきなり夫婦と言われても」
左近が困惑した顔になる。
「俺じゃ、いやなのか?」
「(困った顔をしたいのはこっちだ)いやとか嫌いという問題ではない。少し時間が欲しい」
「あ、ああ・・・そう、だよな。すまん」
その日はそれから言葉を交わさなかった。

「左近」
翌日、綾女が硬い声で声をかけた。左近は何の表情もない顔で綾女を見た。
「私は、里を妖魔に滅ぼされた。兄が継ぐはずだったご神刀を継ぎ、女を捨てて戦ってきた」
綾女はそっと左近の手を取った。左近の顔に朱が走る。
「でも、もう戦いは終わった。だから、左近の申し出を受けようと思う」
左近は綾女を抱きしめた。
「もし、もし戦いが終わっていなかったら不埒なことを言ったと怒っていた・・・んっ」
言葉は左近の唇で封じ込まれた。綾女は左近の胸を押して抵抗したが、徐々に力が抜け、左近の首に腕を回した。
素直になればいいのだと、綾女は思った。左近の命をつなげた時の想い、あれが原点なのだ。

「左近は何に対しても冷静で合理的なものの見方をすると思っていたが、なんか違うな」
「まぁ、俺はいったん死んだからな。今は綾女のために、俺たちのために生きているようなもんだ」
空き家を出て歩きはじめたふたり。お互いに指を絡めてしっかり手を握り合う。ふたりの行先は誰も知らない。

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