お風呂場と寝室で数日ぶりの営みをし、ふたりとも満たされていた。左近の腕の中で愛おしい綾女が眠る。時刻は明け方、束の間の朝寝。
雨はいつの間にかやんでいたが、日が射さないどんよりとした空。肌寒さに、綾女が左近にすり寄る。
「あったかい」
左近の腕の中にすっぽりとおさまってしまう。素肌からお互いのぬくもりを感じる。筋肉が張った左近。やわらかくしっとりした肌の綾女。左近は、特にやわらかい綾女の胸に顔をうずめる。くすぐったがって綾女は笑うが、その声は次第に甘い声になって左近の耳を溶かしていく。
やがて左近は綾女の胎内に熱い噴流を注ぎ込む。綾女は感じすぎて声も出ず、腰を震わせていた。
「もう、左近たら、何回も…」
「ん?」
綾女が可愛く見上げている。文句を言うが、本音はさほどでもない。照れからきているものだと左近はわかっている。汗ばんだ綾女の額に軽くキスをして、左近は起き上がった。もう7時だ。
「もう少し寝ていていいよ。おいしいコーヒーを淹れるから」
「うん、ありがと」
綾女の髪を撫でた。
しばらくするとコーヒーのいい香りがしてきた。左近が淹れるコーヒーは本当においしい。同じ豆なのに、どこかひと手間が違うのだろう。コーヒーの香りにつられて、綾女も起きた。
「なんだ、もう少し寝ていてもよかったのに」
キッチンでサラダを作りながら左近が振り向いた。その背中に綾女がくっつく。温かい左近の背中が好きだ。左近は綾女のぬくもりを感じながら手を止めない。まるで小さい子が母親に甘えているような風景である。綾女を背中にくっつけたまま、左近は手際よく朝ご飯を作っていく。
「ほらできたぞ」
背中のぬくもりが離れた。左近から皿を受け取り、そっと運ぶのは綾女そっくりの小さな女の子。
「上手に運べたね」
左近を見上げてにっこりする顔は、本当に綾女のようだ。左近がコーヒーとミルクをカップに入れていると、綾女が奥から出てきた。
「新聞きてたよ」
左近そっくりの男の子がリビングに入ってくる。
「ふたりともありがとう。みんなでごはん食べましょ」
温かい家族のぬくもり。
「こんな風景がいいなぁ」
左近が夢見る瞳になって綾女を見るが、聞いていない。
「冷めないうちに食べましょ。いただきます。わぁ、おいしーい」
焼き立てのパンをおいしそうに食べる綾女を見て、左近は「ま、いいか」と思うのだった。
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