梅雨の走りか、雨が多くなってきた。
「左近、おはよう。うふふ」
シャワーを浴びた俺に綾女が近寄ってきた。棒を見せる。
「あ、これは」
妊娠検査薬。しっかりマークが2本ついていた。
「今日病院に行ってくるね」
俺も行きたかったが、仕事の都合がつかなかった。気になりつつも何とか定時には終わらせ、ダッシュで帰宅した。
「綾女、どうだった」
「うん」
綾女はテーブルに写真を出した。小さいお豆ちゃんの中に小さな点。
「心拍確認できました。妊娠2ヶ月です。12月29日が予定日です」
「おおー!でかした!よかったな綾女」
俺はひそかに計算し、あの濃厚な春の3日間で出来たと確信した。
翌日からつわりが始まった。ご飯の匂いが相当だめらしい。仕事をしている方が気がまぎれるというが、お昼休みがダメで、車や応接室のソファを借りて休んでいるらしい。白湯と漬物と焼き魚しか食べられず、痩せてしまった。俺とのキスも嫌がる。
「綾女、痩せたんじゃないか」
「んー、ご飯食べられないからね。でもそう長く続くものではないから」
2週間たって突然つわりが終わった。
「あれ?」
顔色が格段にいい。
「ご飯がおいしいわ。ついこの間までダメだったのに」
食欲が戻って俺も安心した。キスも嫌がらなくなったからさらに安心だ。
梅雨寒のため、綾女は手足を温めている。妊娠してから若干体温が上がっているが、冷えは気になっているようだ。
あまりトラブルもなく順調に過ごしていた。
夏になり、綾女は安定期に入った。少しずつおなかが目立ってきて、歩き方もゆったりしてきた。そして暑がる。
「冷やしちゃいけないし、水分の取りすぎもよくないし、暑いし、大変ね」
俺は反対したが、長い髪を肩のあたりまで切ってしまった。
「髪、切ったんだな」
「暑いもの」
「えー、シーツに広がる綾女の長い髪が好きなのにな」
「また伸びるわよ」
綾女が軽くキスをしてくれた。
今晩は4か月ぶりの営み。あまり激しくしなければよいと許可も出た。久しぶりに綾女の体を見る。相変わらずきれいで、おなかには俺の子が宿っている。
時間をかけてゆっくり、ゆったりと愛し合う。おなかに負担をかけないようにやさしく抱いた。
「こういうものもいいわね。左近は激しかったから」
「俺はもともと優しいぞ」
汗ばんだ綾女の額の汗をぬぐった。
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