カラランッ
グラスの中の氷が音を立てた。
「アイスコーヒー、もう1杯飲む?」
食器を下げながら綾女が声をかける。
「ああ、もらえるか」
世間は今日からお盆休み。どこそこの空港が混んだとか、新幹線乗車率やら高速道路の渋滞やら、この時期はそんな情報が飛び交う。
「お盆休みねぇ。綾女はいつまで?」
「週明けまでよ。印刷所とか取引先が全部休みだから。休み明けが怖いわ」
「そうか。俺はあんまり関係ないな」
アイスコーヒーが左近の前に置かれた。
「はいどうぞ」
「ありがとう」
綾女は手際よく片付けていく。洗濯機は回っており、台所が終わると終了のブザーが鳴った。綾女は洗面所に行き、洗濯物を出して手早く干していく。2回目の洗濯を回している間に掃除を始めた。見ていて無駄がなく気持ちがいい。
左近は2杯目のコーヒーを飲み終わると、玄関の掃除をしてゴミ出しをした。戻ると洗濯機が鳴っている。
「干してくれる?」
拭き掃除をしながら綾女が声をかけてきた。2回目の洗濯はシーツとタオルケット。天気がいいと、どんどん大物を洗濯する。
「あー、あっつい!」
掃除を終えて汗びっしょりになった綾女。軽くシャワーを浴びて戻ってきた。
「手伝ってくれてありがとうね。一緒にすると早いね」
「そうだな。俺も入ってくるか…覗くなよ」
「何言ってるの」
綾女をからかって、左近はシャワーに入った。
左近がシャワーから出ると、綾女がアイスを持ってきてくれた。
「うっかりしてた。これが最後の1本。あげる」
「え、いいのか」
「いいよ。手伝ってくれたんだもん。あとで買いに行くわ」
「昨日仕事帰りにあんなに買い物をしたのにな」
「そう!そうなの!冷凍だから一番最後に買おうとして…買い物の量が多くてうっかり忘れちゃったのよ」
綾女のマイブームで、毎晩1個ずつアイスを食べている。
「あんなに食べたら太るぞ。かき氷アイスが好きなら、氷を舐めていればいいじゃないか」
「だって、好きなんだもん。あーん、今日は午後2時までのセール…暑いなぁ」
広告を見て綾女が悔しがっている。アイスのセールが昨日終日と、今日午後2時までになっていた。時計を見てため息をつき、ゆっくり立ち上がった。
「行くのか?」
「だって、今のうちの方がまだましでしょ。お昼は暑いもの」
左近が笑った。
「俺が行ってくるよ。何のアイスを買えばいいんだ?」
「え?いいの?えっとね、これとこれとこれと…」
左近はクーラーボックスを持って車に乗った。車内も焼けるように暑い。車で5分くらいで行きつけのスーパーに着いた。
「あちーな。アイスアイス…かごいっぱいになっちゃったぞ。あ、ネギも安いな。確かうちにはなかったな、そうそう鰹節もなかった」
クーラーボックスにぎっしりとアイスを詰めて、左近は帰宅した。
「ありがとう!」
キラキラした顔で綾女が出迎えてくれる。
「ネギと鰹節も買ってきた」
綾女のキラキラが増した。
「すっごい嬉しい!左近が出かけてから買い忘れに気が付いたの。さすが左近、嬉しいわ。アイスしまわなきゃ」
「そうだろそうだろ、俺に感謝しろよ」
綾女はクーラーボックスからアイスを取り出し、冷凍庫に上手に詰めている。きっちりぴったり詰めて満足げだ。
「これでしばらくは大丈夫。左近、すごい汗ね。もう一回入ってきたら?」
左近は黙って綾女の手を引っ張った。
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