家の窓から、安土の桜が見える。ここ数日暖かい日が続いたためか、遠目からもうっすらピンク色に染まって開花し始めていることが見てわかる。
桜の時期といえど、朝晩の冷え込みはまだ残る。
「おはよう。早いわね」
綾女が起きてきた。夕べは仕事が遅くまであり、帰宅したのは22時過ぎ。そのままお風呂だけ入ってコテンと寝てしまった。
「休日出勤か?」
「そう。昨日遅くまで残ったけど、終わらなかった。もう残念だわ。お昼には終わらせるから、買い物をして帰るわね」
「俺が朝ごはん作るから、買う物メモれよ」
「ありがとう。冷蔵庫空っぽだから、買う物がたくさんあるのよ」
コーヒーを淹れなおし、トースターを温める。その間にサラダと目玉焼きを作り、パンを焼く。
「できたよ」
「はーい」
向かい合って座り、朝食を食べる。食後に綾女はきちんとメイクをし、ジャケットを羽織った。
「じゃあ、行ってきます」
「ん、気をつけて」
軽くキスをして綾女は出かけて行った。綾女からのキスは、いまだに照れるらしい。そこがまたかわいくて、左近はニヤニヤしてしまう。メイクをすると綾女はさらに美人になるが、左近は素顔の綾女が好きだ。
「綾女、かわいいなぁ」
窓から綾女が運転する車を見送ると、左近は洗濯、洗い物、掃除をテキパキとこなしていく。
「今日はシーツの洗濯がないから、洗濯が1回で済んだな」
独り言を言いながら洗濯物を干すと、いったん家事は終了。時計はまだ9時だ。
昨今の社会的ご時世で、綾女もテレワークをしていたが、仕事の内容によって出かけなければならないことがある。左近はもともと自宅で仕事をしているので、あまり変化はない。ただ、取材に出かけられないため、少しだけ仕事は滞り気味だ。
買い物はどちらか外に出た方がやっている。
「まぁ、物は考えよう。データ整理がはかどると思えばいいじゃない」
綾女が笑って言ってくれる。いつでもポジティブな考えを示してくれる。
書斎の窓を開け、パソコンに向かって仕事を始めた。
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