車の音で綾女が帰ってきたとわかると、左近は玄関を開けた。案の定両手いっぱいにエコバックを下げた綾女が入ってくる。
「ありがとう。いっぺんで持ってきちゃったから、助かった」
「たくさん買ってくると思っていたからね。お帰り」
「ただいま」
玄関に置かれた買い物をキッチンや物置に運ぶ。これだけの量なら1週間は持つだろう。
着替えを済ませた綾女がエプロンを着けながらキッチンに入ってくる。
「お昼まだでしょ。パスタを作るわ。ソースはレトルトで我慢してね」
片づけをしながら作っていく。左近は綾女に見とれていた。メイクを落としているが、本当に愛らしくてきれいだ。左近の視線に気づいて、少し恥ずかしそうに笑う。
「なぁに?」
左近はキッチンに入って、綾女を後ろから抱きしめた。綾女の顎を上げて唇を重ねる。
「ただいまのキス、していなかった」
「うん」
さらに深く唇を重ね、舌を絡める。綾女の吐息が甘く変わる。
「パスタ、焦げちゃう」
「そうだな」
やっと唇を離し、うっとりとした瞳で見つめ合った。
お昼を食べていると、冷たい風が吹いてきた。空がいつの間にか薄暗くなって一雨きそうだ。
「洗濯物」
言いながら左近が急いで取り入れる。綾女は雨戸を閉める。乾いた洗濯物をたたんでしまっていると、雨の音が聞こえてきた。
冬に戻ったような寒さに、左近はお風呂のスイッチを入れた。
「花冷えにしては、冷えるなぁ」
「そうね。明日も冷えるのかしら」
左近は黙って綾女を抱きしめた。綾女の手を引いて一緒に洗面所に入っていった。
- 現代版
- 686 view
この記事へのコメントはありません。