夜中に綾女は、見知った気配に安堵を覚えた。
「左近」
「ああ」
綾女の布団にもぐりこむ左近。綾女は体を摺り寄せた。
「・・・ってこれ、やるんですか?」
左近は狂喜乱舞しているが、綾女はどんよりとした気を背負っている。
「だってプライベートでは恋人同士でしょ。地を出していいからとことんやっちゃってよ」
監督の無責任発言。
「とことんって・・・。あいつがきっとセーブできないと思うんですけど!」
綾女が左近を指さした。
「あ、だいじょぶでしょ。何度もしちゃだめだよってさっき釘刺したから。それより、いい映像が撮れるまでOKださないからね」
監督は無責任に楽しんでいる。悩んでいるのは綾女だけだ。
布団にもぐりこむ左近。すっかり緊張して硬くなっている綾女をやんわりと抱きしめた。
いつもの、プライベートの左近に綾女は安心感を覚えた。
「左近・・」
甘い甘い声を出して綾女は左近に擦り寄る。
「やっとふたりきりになれたな」
「待っていたの」
左近が綾女の黒髪を何度も撫でる。そのまま左近の腕の中で眠りにつく綾女。そんな綾女を愛おしそうに見守る左近。
そこでOKが出た。
「悔しいです、私・・・」
桔梗が歯噛みしている。
「綾女さん、あんな素敵な顔で左近を見つめて。私には優しい顔をしてくださるけれど、あそこまではありませんわ。認めたくないけれど、心底愛し合っているんですね」
「俺も認めたくなかったが、あの綾女が惚れた男だ。たいした奴だよ、まったく」
桔梗と進之助の意見が合致し、ふっと笑いあった。
やがて外伝も終わりに近づいた。
「この収録が終われば、みんなは元の世界に戻ってしまうんでしょう?」
綾女が寂しげに呟いた。
実際に存在しているのは、綾女と左近のふたりだけ。
「案ずるな。いつも俺たちは見守っているから」
進之助が優しく綾女を諭す。
「しっかしよぉ、これ公開した時に、出演者ふたり以外はみんな死んでるっていったらホラーだよな」
喜平次が大げさに肩をすくめた。
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