「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 閑話
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戻れる?

月食が戻りつつある、安土。
「これで、おぬしも、女に戻れるな」
綾女は首をかしげた。
「女ではないぞ?」
左近の顔色が変わった。
「嘘だろ?あの蓬莱洞で口づけたのは、男だったのか?この想いは男に感じていたものだったのか?」
「うーん、想いに応えたいのはやまやまなんだけど、こればっかりはねー」
左近ががばっと起き上がる。
「え?え?え?」
青ざめた顔でペタペタと綾女の体を触りまくる。
「わぁっ、ないない!胸がないじゃん!ぎゃっ、ある、あるじゃんあるじゃん!うわぁぁぁぁ」
左近はパニックを起こし、卒倒した。左近の叫び声が安土中にこだました。
「・・・ってぇな、思い切りつかみやがって。おい、綾女、起きろ」
ふっと優しい表情が戻る綾女。
「あれ?私?やだ左近、どうしたの」
左近が顔面蒼白で虫の息で横たわっている。
「ショック療法で蘇生を試みたが、ショックが過ぎてしまったようだ。もう俺には手の施しようがない、何とかしてやれ」
「蘭丸、またあなた何をしたのよ」
「綾女が実は男だったと・・・体も男に変えてたら、左近が勝手に確認して卒倒しただけだ」
「もう!左近の息が止まってるじゃない」
「あれだな、人工呼吸しかないな」
綾女の顔が赤くなる。
「恥ずかしいから、見ないでよ」
綾女は上着を脱ぎ、丸めて左近の肩の下に入れた。顎を上げ、唇を重ねる。その瞬間に左近が気づいた。
「わぁっ」
全力で後ずさった。急に動いたためにめまいを起こしている。上着を脱いだ綾女を見る。どう見ても女のようだ。
「綾女か?」
「そうよ」
「女か?」
「そうだけど?」
左近が全力で一気に近づいた。すかさず胸を両手で触る。
「ある…っ」
綾女に叩かれた。
「バカバカ、どこ触ってんのよ、もう!」
上着を羽織り、左近を睨みつける。そばで蘭丸がおなかを抱えて大笑いしているさまが、綾女には見えた。
「もうこれで左近の命は大丈夫だ。お前らお似合いだな、いい冥途の土産になった。みんなに話してやろう。じゃな」
蘭丸はいなくなった。

「もうここに用はない。山を下りよう」
ふたり連れだって下山する。綾女は左近と常に一定距離離れて歩く。
「もうこれで、おぬしも女に戻れるな」
「うーん、どうかしら。今まで完璧な男装だったし言葉遣いや身のこなしも男だったから、今更って感じよ」
「完璧か…。もうほとんどばれているぞ」
「嘘でしょ」
「気づいていないのは龍馬くらいのものだ。お前の胸がどんどん大きくなっていくのを見て、『ありゃ何かの病気か?腫れてきて痛ましい』と本気で心配していた」
「龍馬殿らしい…だけど、本当に見る間に大きくなって…どうしてかしら」
「そりゃ、俺が毎晩揉んでいるから」
綾女の足が止まった。左近はどっと冷や汗が出た。
「最近ね、すごく寝相が悪くなったなって思っていたのよね。いつも寝乱れているし。そう、あなたが原因なのね」
恥ずかしくて真っ赤な顔の綾女が左近の着物をつかむ。
「まさか、もう全部…?」
「いや、胸だけだ、胸だけ」
左近を突き放すようにして、綾女はさっさと歩き始めた。耳まで真っ赤だ。
「もういや、恥ずかしい、どうして気がつかなかったのかしら、もう、左近のバカバカ!」
「綾女、待てよー」

その後のふたりがどうなったか。安土は黙して語らず。

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