戦いの終盤に雲行きが変わり、大粒の雨が降ってきた。服に雨が染み込み、重くなる。
「あと一撃で倒す!」
「やめておけ、深入りはするな!」
綾女は左近が止めるのを聞かず、妖刀を構え敵中に飛び込んでいった。青白い炎のような光が巨大な敵を包み、消し去る。
大変疲れただろうに、綾女は気丈に振る舞い、しっかりした足取りで戻ってきた。
「あやつは逃げようとしていた。今潰しておかないと被害が広がるだけだ」
止めた左近を咎める。
「だが疲れていたじゃないか。俺たちが先に潰れてしまうかもしれないと考えなかったのか」
綾女はくすりと笑った。
「左近がいる。私が危なくなれば加勢すると考えた」
「そんな賭けをして。まったくお前は…」
綾女がふらついた。左近が抱き止めると気を失っていた。
「言わんこっちゃない」
蓬莱洞で火を焚き、暖をとる。急いで濡れた衣服を脱がせ、髪をほどき、乾いた単衣をかけた。寒いのか、顔色がよくない。左近も服を脱いで乾かす。春とはいえ、雨に濡れた体からは体温が奪われてしまう。綾女にかけてしまったため、左近は全裸である。さすがに寒く、綾女を抱いて単衣をふたりで分けあった。
触れあう肌からお互いの温もりが心地よい。綾女の顔色がよくなり、頬に赤みが戻ってきた。左近のたくましい腕が綾女をスッポリ包み込む。
「華奢だな」
戦いぶりからは想像できないほど、綾女は可愛らしい寝顔をしていた。今の姿はもちろんだが、どこから見ても守りたい女性だ。顔は可愛らしいが、体は驚くほどメリハリが効いている。視線を落とせば深い谷間を形作る豊かな乳房。引き締まってくびれた腰。すらりとした手足。
お互いの肌は乾き、少しずつ体温が戻ってきた。あとは衣服が乾けばよいが、明日の朝までかかるだろう。
「ん…」
綾女が意識を取り戻した。自分が裸で、裸の左近に抱かれている。
「あっ、なぜ?」
慌てて腕で乳房を隠す。左近にはすでに舐められるように見られていたが。
「あんな濡れ鼠では、風邪をひくぞ。お前は気を失っていた。だから俺が脱がせた」
綾女は髪をさわった。ほどかれ、髪は乾いていた。
「それから、乾いた単衣は1枚しかない。ふたりとも風邪を引かないためにはこれしかなかった」
綾女は恥じらい、頬を染めた。小さい声でありがとうと言う。服をさわり、乾くまで時間がかかることを悟り、小さなため息をつく。外の雨はますます激しさを増し、春の嵐になっていた。
ふたりだけの空間。左近は綾女の肩を抱いている。左近の髪が綾女の髪と混ざりあう。綾女は目を閉じて左近の鼓動を聞いている。
「人の背中や心臓の音は落ち着くな」
「ああ」
左近の低い声が体を伝わり響く。綾女はドキドキした。
「何か話をしてくれないか」
上目遣いで左近を見る。可愛らしくて左近の鼓動が速くなった。綾女は察してくすりと笑った。
「何を笑っている?」
左近は分かっていた。言葉や表情はごまかせるが、鼓動はできなかった。綾女に女を感じ、愛おしいと思う。
「だって、私が見たら速くなって」
細い指で左近の胸をつつく。
「お前はどうなんだ」
綾女の乳房に耳を当てる。甘い香りが漂う。
「いやっ何をするのっ」
綾女の細い腕が左近を引き剥がそうとする。顔は真っ赤だ。
「綾女と同じことだぞ?」
とぼけて左近が答える。綾女の鼓動は早鐘のようだ。
「もうっ」
真っ赤な顔で左近を可愛く睨む。嫌ではなかった。微かに甘い吐息になる。左近は唇で吐息を塞ぐ。
「ん…あ…」
2度目のキス。綾女の唇はプルンとした果実のように艶やかで甘い。左近は舌を入れ、口の中を堪能する。唾液を交換し、名残惜しそうに唇が離れると唾液が糸を引いた。
「今度は叩かないのか?」
からかう左近。綾女はとろけている。キスだけで力が入らなくなり、左近にもたれた。まったく余裕がない。左近の想いを感じていた。
「なぜ、こんなことをする」
「好きだからだ。綾女が好きだ」
左近のせつなげな瞳。左近も余裕がなかった。こんなに愛おしいと思う女性はいない。
何度も熱いキスを交わす。唇だけでなく、首筋にも舌を這わせた。綾女は微かに震えていた。
「わからない。左近の気持ちを受け入れたいけれど、こわい…」
左近は優しく微笑み、髪を撫でた。
「何がこわい?」
綾女は 自信なさげに自分の両肩を抱く。
「体が、変わってしまうようで怖いの」
左近は優しくキスをした。
「気持ちは…?」
「好き」
綾女が言った。左近は嬉しそうに抱きしめる。
「それなら大丈夫だ。ゆっくり優しくするから、体の変化に正直になればいい」
綾女と左近は気持ちが通じあっていた。それをお互いに知り、心の枷がなくなった。綾女は恥ずかしそうに身を寄せた。
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