「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 閑話
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あなたに会いたい

寂しくてたまらない夜がまた訪れる。
綾女を庇い、死んでいった左近。
「夢にも現れてはくれないのだな」

あれからもうひと月になる。真夏の短夜は、まどろみしか与えてくれない。眠れない夜が続き、綾女は心身ともに疲れきっていた。
今がいつなのか、どこなのか、朦朧としながらたどり着いた場所。
「ここは…」
左近に唇を奪われた、蓬莱洞。
「左近」
愛しい人の名を呼んで、そのまま綾女は倒れこんだ。

「綾女」
懐かしい声が聞こえる。綾女はこんこんと眠り続けている。疲労は相当であり、回復するのに必要な休息である。
「綾女、聞こえるか…」
深い眠りの底から、綾女は浮かび上がろうとする。鉛のような倦怠感が眠りの淵に引き下げていく。
「行かなきゃ…呼んでる…」
「綾女、疲れているな…」
「左近、いるの?」
左近の雰囲気が漂う。綾女は再度浮かび上がろうとする。
「会いたい、あなたに会いたい」
「綾女、無理するな。こうして言葉を交わせただけでよいのだ」
綾女はまた沈んでいった。左近に悲しげな雰囲気がまとわりついた。
「俺はもう、行かなければならないのだ。最後にお前を抱きしめたいと来たが、俺から触れることはできない…」
「だめ…待って」
綾女は渾身の力で眠りの淵から這い上がる。綾女の体が動き、左近の名を呼ぶ。
「左近」
「綾女」
綾女の手が空をさ迷う。鉛のような重さ。それでも綾女は振り切り、顔を上げた。瞼を開き、左近を探す。
「左近」
綾女が触れやすい位置に左近がいた。
「本当に左近?」
「ああ。今だけ実体化できている」
左近が愛おしげな顔で綾女を見つめている。
「左近」
綾女が抱きついた。左近の逞しい腕が綾女を抱き止める。
「夢か現か…どちらでもよい、夢ですら左近には会えなかった」
左近は何度も綾女を撫でた。
「俺はずっとここにいた。綾女の唇を味わった場所だからな。お前を待っていてよかった。やはり来てくれた」
綾女の瞳が潤む。左近は何度も唇を重ねた。
「嬉しい…」
綾女は安堵したためか、深い眠りに落ちそうだ。
「もう、行くの…?」
「会えてよかった。綾女はゆっくり体を休ませろ」
綾女の瞳が閉じられた。

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