「わしごとやれいっ」
龍馬が冥府魔道に飛び込む瞬間、左近と綾女の妖刀もすさまじい青い光を出した。
まわりは封魔の光で目もくらむような明るさとなり、綾女は天主の石垣に飛びのって冥府魔道が閉じていくことを確認した。
「閉じていく。冥府魔道が閉じていく。左近!」
後ろを振り返るが、そこに倒れていたはずの左近は、いなくなっていた。
「左近?左近どこだ、左近!」
煙漂う中に目を凝らすと、薄いが青く光るものが木々の隙間に見えた。綾女は駆け下りていく。木の枝が刃のように服を切り裂くが、お構いなしに光るものを目指した。
「あった。やはり」
木の枝に引っ掛かり光を放っていたものは、左近の太刀だった。妖刀の光を出したときは、左近はしっかりと握っていた。爆風で飛ばされたのかもしれない。
「左近…どこにいる」
あの傷だ。さらに地面に叩きつけられていたら、もう命はないかもしれない。
綾女は一度深呼吸をした。水音が聞こえた気がした。
「濠?」
爆発に伴う石や木々のかけらで濠は半分埋まっていた。その間に白い服が見えた気がした。
「あっ」
左近がいた。肩から上は水面から出ていたが、足元は濠の底の泥にはまり込んでいるようだ。たまたま周りには石や木がなく、水だけだった。
「左近、左近!」
綾女は左近の肩を持ち、揺らした。意識がない。だが、頸動脈には触れた。意識がなく、鎖帷子をつけ、さらに泥の中にはまり込んでいる。女の身では助け出すのは困難に思われた。
「左近、今引き上げるからな」
総重量100kg超えを難なく引き上げていた。下半身は泥だらけで、綾女はざっと洗い流した。
それからどう運んだか覚えていないが、綾女は空き家に入り、左近の看病を始めた。
まずは服や鎖帷子、武器類をすべて外し、身体をきれいに拭き清めて傷の確認をした。出血していた傷はまだ血がにじみ出ている。背中の火傷、そのほかの細かい傷にも綾女は手早く薬草で薬を作り、処置をしていった。包帯を巻き終えると、綾女はそのままバタンと倒れた。
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