どのくらい倒れていたのだろうか。
遠い意識の中、青い穏やかな光に守られていたような気がする。
綾女ははっと飛び起きた。左近のそばに這い寄る。左近は目を閉じたままゆっくり呼吸をしていた。
「傷…」
まず、眉間の傷は跡が残っているがすっかり癒えていた。
背中の火傷も痕にはなったが治っている。
そして一番大きい傷も…治っていた。
綾女は自分の姿にやっと気づく。左近を探して木の枝に裂かれた服。見るもボロボロだ。肌に傷もついた。それも何事もなかったように治っていた。
「なぜこのようなことが?」
見回すと、揃えて置かれた自分の小太刀と左近の太刀が柔らかく光っていた。
「この光に救われたのか…」
綾女は再度左近と自分を拭き清めた。
少し左近の体が冷たい気がした。
「左近、聞こえるか、左近」
声をかけ、揺さぶるも目は閉じたままだ。体が温まる薬湯を作り、薬湯を口に含み、口移しで左近の口に流し込む。お椀が空になるまで数回繰り返した。
左近はすべて飲み下せた。
「よかった・・・」
少し落ち着いた綾女は、左近の服を繕った。そして自分の服も脱ぎ、繕う。ふたりとも一糸まとわぬ姿。
綾女は左近の掛物の中に自分の身を滑り込ませた。少し低い左近の体温を回復させるため。それは言い訳だった。
口移しの時から胸は高鳴っていた。死んだはずと思っていた命を思いがけず救えたことがうれしかった。それだけではない、甘やかな気持ちも芽生えていた。
左近の胸に耳を当てる。規則正しい鼓動が聞こえてきた。
「生きている。左近、生きているんだな」
綾女はうれしくて、頬を摺り寄せる。その表情は少女から女性へ移り変わる美しさである。
左近の手を取り、自分の手と合わせてみる。一回りも大きさが違い、長く節のある指に綾女は自分の指を深く絡めた。
「大きい手。私の手がすっぽり隠れてしまう」
チュッと軽く唇を落とす。
「左近、この手で私を抱きしめて」
言ってみて真っ赤になる綾女。左近から顔が見えないように顔を下に向け、さらに体を摺り寄せるのだった。
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