「では、どうすればいいのだ」
硬い声で綾女は言った。小さく息を吐くと、左近に向き直った。
「私は、好きでこんなことをしているのではない。誰が好き好んで命を奪うのだ・・・」
「お前は女だ。女は命を育てるものだ。俺がやるから、お前はもう殺すな」
言わずに奥底にしまっていた言葉を、左近は口に出した。
「何を言う。もはやこの刀には、血が染み付いている。私にもな。血は、血を呼んでしまうのだ。この世が変わらない限りな。それがこの妖刀を持つ者の運命だ」
抑揚のない声で綾女は言い放った。さだめ。その言葉に左近は眉間にしわを寄せた。
「お前、それが本当に自分の運命だと思っているのか」
綾女は左近を見上げた。まじめな顔で左近は次の言葉を続けた。
「同じ血なら、俺とお前の血を受け継ぐのも、運命ではないか」
「・・・?」
綾女は意味がわからず、首をかしげた。左近はわずかに動揺し、あわてて言い繕う。
「血を受け継いでいくのは、女であるお前の役目だ」
「わからぬ。お主が言っていることは皆目わからぬ」
綾女は理解できずにその場を離れた。
年月は流れ、やがて綾女は左近の言葉を思い出すことになる。その時になってやっと、左近が何を言わんとしていたのか理解することができた。
「そうか、あのときお主は勇気を振り絞って告白したんだな」
取り巻く風が、ふっとあたたかくなった。
- あの時代
- 46 view
この記事へのコメントはありません。