「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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月光1

綾女を失ってから、はやひと月がたとうとしていた。
ふと綾女の気配を感じる時がある。
もういないはずなのに、あの夜の甘い香りが漂う。
「俺はおかしくなってしまったのかもしれないな」
左近は自嘲気味に呟く。
今宵は満月。
左近は気が向くままに涼を求めて、山の中の滝に行った。
夜中なので、当然誰もいない。
淵の岩に腰掛け、湿った空気を吸い込む。
またあの香りがした。
「綾女?」
左近の呼びかけに応えるかのように香りが強くなる。
・・左近
今でも覚えている、愛しい者の声。
「綾女、いるのか?」
・・ここに。
雲居に隠れていた月が現れ、滝を幻想的な光で満たした。そこに綾女の姿が現れる。生きていたときの姿そのまま、髪を結い、忍び装束で立っている。しかしその表情は左近を慕う女性そのものだった。
「綾女」
左近の胸に狂おしいほどの恋慕が蘇る。綾女に駆け寄り、少し戸惑いながら頬に手を当てる。温かい頬が触れた。
姿亡き者のはずなのに、触れることができる。
・・月に一晩だけ、私はこの姿になれる。満月の夜だけ。
「会いたかった、綾女」
左近は綾女を抱きしめた。この温もり、柔らかい体、髪の香り。どれも綾女そのものだった。自然と左近の手が綾女の肌を愛し始めようとした。
「いいか?」
綾女はかすかにうなづいた。
・・今日より3月、満月の夜に、ここの滝で左近を待っている・・
左近の想いが真実であったら。
「綾女、愛している」
何度も耳元で囁きかけ、左近は綾女の中で果てた。
夜明けが近づく。
左近は抱きしめていた温もりがなくなっていることに気がつき、目を覚ました。
「綾女・・」
綾女の姿は消え、やがて朝の光の中に消えようとする満月が、綾女の面影と重なった。

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