「スーツケースをガラガラにしておいて正解だったわ」
左近、綾女とも大き目のスーツケースに自分たちの荷物は半分ほどにしていた。
さっき買ったお土産はややきつめに押し込まなければ納め切れなかった。
「さて、夕飯にしましょ」
テーブルに買ってきたものを並べる。
「最終日が部屋食か・・・ま、左近が疲れちゃったからこれでもいいわね」
左近がお風呂から出てきた。
「綾女も入ってきたら?」
「そうね、そうするわ」
シャワーから出た綾女は目を丸くした。
かごに置かれていたのは、左近が追加した服らしきもの。どこから手足を通せばわからないがとにかくよく透ける。ショーツらしきものはただの紐。
「まったく・・・好きねぇ」
その上にパーカーを着てファスナーをしっかり閉めて出た。
出てきた綾女を見て左近はなぁんだ、という顔をした。
「最後の晩餐だな」
今日作ったグラスに泡盛をなみなみと入れる。
「はぁー、おいっし!」
お腹が空いていたのか、会話よりも先に食べている2人。綾女の泡盛のピッチが早い。すでに3杯を飲み干している。
「ちょっと抑えろ、あとでくるぞ」
左近が制したが、もう遅いかも。ほんのりと赤く染まった顔。
「暑い」
パーカーを脱ぐ。いきなりで左近は卒倒しそうになったが、綾女の着ているものは左近が追加したベビードール。透過率95%。先ほど自分がいたずらで置いたものをそのまま着てくるなんて。
「これ、こういうのが左近の趣味?もーエッチなんだからー。私に何をさせたいわけ?」
左近にすり寄り、色っぽい目で見上げる。あまりの迫力に左近はたじたじとなっていた。
「もう食べないの?食べさせてあげる、目を閉じて。あーん」
言われるがままに口をあける左近。不意に柔らかいものが触れた。
綾女からキスしてきている。それもかなり濃厚な。舌まで入ってくる。
「左近、いや?こんな私、いや?」
驚いて固まったままの左近が、自分に反応しないと判断した綾女が悲しげに呟く。
「いや、大歓迎だよ」
甘く答えるが、綾女の迫力に押されて体が反応しない。
「あーいいわ、それならみんな食べちゃうから」
あまり残っていなかったが、トータルでみるとかなりの量の食材を綾女はひとりで食べてしまった。泡盛は綾女に飲ませまいと左近がすでに隠していた。
「お腹いっぱい!苦しいよ。はー・・・」
しばらくお腹を苦しげにさすっていたが、不意にあたりを片付け始めた。
「動けば消化するわよね。グラスも洗っちゃお。さ、片付けたわ」
再び左近に擦り寄る。触れると体がほんのり熱を帯びている。酒のせいか、それとも・・?
少し時間が空いたおかげで左近も落ち着いて綾女を見ていた。
どうやら綾女はお酒を飲むと食べ上戸になるらしい。そしておそらく普段は出てこない色っぽさが出てしまう。その迫力は襲われそうなほどで、正直驚く。他で飲んでしまったら、綾女は危険極まりなくなる。飲みにはひとりで行かせられないし、もし自分が一緒についていったにしても色っぽくなった綾女を他の男が見るなんて許せない。結果:外で飲ませない。
そこまで瞬時に判断した。
また、ここまで誘われたら男として真摯に受け止めるべきだと、左近は思った。
「もういいよー、左近は私に魅力を感じないのよね。こんな透け透けの服着ているのにね、寂しいから寝ます。おやすみなさい」
さっさと布団にもぐりこむ綾女。
「待て、寝るな、おい」
「もう眠いのー。離してよぅ、だって何の反応もないなんて、恥ずかしい思いして女から誘ったのに」
「触ってみろ」
左近は綾女の手を己に触らせた。綾女の酔いが醒めたようで目が丸くなる。
「や・・いやぁっ、何で何で触ってるの」
「え、だって綾女から誘ったんだよ。かなりディープなキスもしてきて」
「え、え、やだ、そんなことしてない、覚えていない。お酒飲んだから?」
「ああ、多分ね」
「はー・・・反省だわ。左近の前でよかった。ねぇ、私どんなことしたの?」
左近は綾女を抱きしめてゆっくり横たえる。
「まず、ディープキスをしてきた」
そして唇を重ねる。舌ももちろん入れて唾液も啜る。やがて熱い吐息とともに唇を離す。
「すごい・・・はぁ・・・溶けそう・・・」
「ほんとだよ・・・それから俺に擦り寄ってきた」
「それから・・・?」
「ここからは、俺がしてやる」
「左近、あの・・・」
「ん?」
「まだ酔いが醒めてないと思うの、こんなこと言えないけど」
見つめあう2人。
「抱いて・・・」
「・・・思う存分にな」
その夜は、結婚してから一番甘い夜になった。
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