「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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生きる2

夜明け、左近の傷の手当は終わった。
痛みに時々呻きはするが、意識は戻らない。綾女は左近の体を布団で温め続けた。
「左近、今日はよい天気だ。セミがうるさいくらいだ」
話しかけながら薬湯を準備する。左近の頭をあげ、口移しで薬湯を飲ませる。いつもこの瞬間、綾女は甘くときめいた。そして思いをこめる。生きて、生きて・・と。
左近の体を拭くときは全身のチェックも忘れない。寝たきりになっているため、腰に赤みがないか、確かめる。ひげも剃り、口の中も丁寧に拭いた。
傷自体はひと月あまりで完治した。あとは意識が戻るのを待つだけ。
いつの間にか朝晩涼しく感じられる季節に移り変わっていった。
左近は暗闇の中にいた。
今自分がどの方角に向かっているのか、立っているのか歩いているのかもわからない。時折、明るい光が舞うことがあるが一瞬だけで、また音のない闇に戻る。
俺は死んだのか。
いっそのこと、この暗闇に身を浸せば楽になるのかもしれない。
また明るい光が舞った。
この光はなんだろう。
「左近、今宵は月がきれいだ」
薬湯を飲ませ終え、名残惜しそうに唇を離す綾女。左近の額に口付けを落とす。もう何度、唇を重ねただろう。この一口が左近の意識を取り戻すと信じていた。
「中秋の名月らしい」
左近にそっと布団をかけなおす。
すでに3ヶ月、綾女は左近から離れなかった。
いつも話しかけ、左近を呼ぶ。そして想いが溢れるときはそっと口付けを落としていた。
明るい光は次第に明るさを増し、どこからか声も聞こえていた。
左近・・・
この声は、愛しい人の声。
俺を呼んでくれるのか。どこで呼んでくれるのか。
左近は声の方に向かって手を伸ばした。
左近の手が動く。綾女はそれに気づき、左近の顔を見た。
「左近、左近」
ゆっくりと左近の目が開く。自分を見ている綾女。身体中が重い。
「あや、め・・」
綾女の顔が泣き笑いになった。左近に抱きついて肩を震わせた。
「左近、よかった・・」
悠庵が呼ばれ、左近の回復力に驚いていた。ゆっくり診察し、顔をほころばせた。
「もう大丈夫だ。だが体力はかなり落ちているから、無理はしないように」

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