「洞窟・・」
初めて会ったのに、どこかに埋もれていた記憶が蘇る。
綾女の様子を左近は何も言わずに見守っていた。
何だろう、この気持ち。
とても左近が懐かしく思える。
ずっとずっと前から知っていた。今の世ではなく、もっと昔に。
そばにいるのが当たり前で、最期に想いに気づいた。
切ない想い…。
綾女は左近を見上げた。優しい瞳が見返している。
ああ、この瞳は変わらずに私を見てくれていた・・。
「部屋に行く?」
左近の言葉に綾女は頷いた。
左近は東京に滞在している間、この部屋を自室のように使っていた。
人も訪ねてくるので、最上階のスイートを使っている。
左近は綾女をソファに座るよう、促した。
「すごい所に泊まっているんですね」
綾女は窓にそっと手を当てて景色を見た。その手に左近の手が重なる。綾女の鼓動が早くなった。動けない。左近はゆっくり綾女の手をとり、振り向かせた。
「ここに座って。話をしよう」
「あ・・はい・・」
綾女はそっと大きく息を吐いた。
- 現代版
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