左近はコーヒーを綾女に勧めた。
そして自分が覚えていることをゆっくり話しはじめた。
ずっと探している女性がいること、その女性が綾女だということ。
「安土に行けば、何かわかるかもしれないが・・」
「安土。行ったことはないの?」
「ああ、何年も気にはなっているんだが、なかなか行く機会もなくて」
左近は綾女を見つめた。無言の誘い。
「私も行けば、何かわかるかしら」
綾女も左近を見つめた。
翌日の朝、2人は安土山にいた。
左近が何度も夢で見る風景そのままに、安土山は佇んでいる。
新緑が陽光にきらめいている。
「ここだ」
左近が草に隠れたふたつの小さな石柱を指差す。
「結界・・?」
綾女が少し怖そうに、左近に身を寄せた。
「怖い?」
綾女はかすかに頷いた。左近の手が綾女の手をしっかりと握る。綾女は顔を紅くした。
「行くよ」
2人は一緒に結界を越えた。
- 現代版
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