「私、あなたに会ったのは初めてだと思うんですが」
綾女はこわごわと指輪を左近に返した。
「そうでしょうか。私の名前を呼んだり、顔や仕草で何か・・」
「左近」
綾女は呼んでみた。懐かしい響き。夕べもそう感じた。何かを思い出しそうだった。温もり・・。
「手を・・」
綾女は左近の手を握り、頬をすり寄せる。目を閉じて左近の名前を呼んだ。
「左近・・」
左近は優しく見守っていた。
食事を終え、ふたりはレストランを出た。
綾女は、先ほどまでの自分の仕草に顔を紅くしたままだった。
「ごめんなさい、あんなことしてしまって」
「いや、何か感じることはあった?」
綾女は左近を見つめた。
「ぬくもりを感じて・・。でもそれはずっと前から知っていたような。自分はここにいていいと思わせるような安心感もあって・・」
「綾女」
左近の唇がゆっくり重ねられる。綾女は突然の展開に目を開けていた。
パン!
綾女の右手が左近の頬を叩いた。
「な、何を・・」
そして自分の手を見て左近を見た。
「ご、ごめんなさい、大丈夫?」
綾女の手が左近の頬に当たる。優しく撫でさする。
「急にあんなことするから驚いてしまって・・。また叩いちゃった」
自分で言って綾女は気がついた。
前にも左近を叩いたことがあった。寒く、薄暗い洞窟の中で。
- 現代版
- 60 view
指輪に名前を刻んで願掛けするって、なんてロマンチックなんでしょう。私もしてみようかな~と思ってしまいました☆
意図せずとも過去を辿りながら、また惹かれあう… 運命の出会いってこういうことなんでしょうね。憧れてしまいます。
コメントありがとうございます。
先日行った帝国ホテルのロビーの雰囲気と、昨日見た安土の夢を織り交ぜたイメージで想像しています。
現代版だと左近はリッチな感じがするんですよね。
指輪が縁の運命の出会い・・いいですね。