綾女は誰かの大きな意思に引かれるように、安土に来ていた。
今宵は満月。
「左近は、月を見ながら逝ったのだったな・・」
切ないほどの想いが胸に溢れ、綾女は嗚咽を漏らした。
今際の際になって、綾女は左近の想いと自分の想いに気がついた。
惹かれていたのだ、左近に。
「綾女」
そう、こんな風に左近は私を呼んでいた・・。
ギクッとして綾女は声の方を見る。そこには紛れもなく、左近が立っていた。
「化け物か?」
「残念ながら、俺は妖刀の餌食にはなりたくない。久しぶりだな、綾女」
「本当に左近か?」
「ああ、本物だ。なんなら、俺に何か聞いていいぞ」
綾女は少し考えた。
「私の兄の名前」
「進之助」
「私を慕った人は」
「桔梗」
「里を襲った化け物」
「三枝陣内の三つ首・・・もういいだろう」
左近はすたすたと綾女に近寄り、抱きしめた。綾女はその温もりと左近の匂いに安心感を覚えた。
「左近なんだな・・・よく無事で・・」
「ああ」
柔らかい体を左近は抱き、綾女の匂いをかいだ。甘く、優しい香り。
愛おしい人・・・
「愛している、綾女」
左近の腕の中で綾女は頷き、ふたりは想いを繋げるように唇を合わせた。
- 時を超えた絆
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