安土には、物の怪が棲むと以前から囁かれている。
妖魔ではなく、西洋の悪魔らしい、とも。
その名は、Vampire〜吸血鬼〜
左近はズキズキと痛む頭を触ろうとして、目を開けた。
同時に襲った激しい吐き気。
誰が用意したのか、枕元に木桶があったのを夢中で手繰り寄せ、吐いた。
「!!」
真っ赤な血が多量に吐き出され、左近は手の甲で口をぬぐった。
思い立ち、あの腹部の怪我がどうなったかそっと手をやると、布が当てられ、包帯が巻かれている。
汚れた体はきれいに拭き清められ、柔らかな布団に寝ている。
辺りを見回すと、少しだけ開けられた窓から涼しい風が吹いている。
「目が覚めましたか」
気配も何もなく、ひとりの若い女性が入ってきた。
「ここは・・?俺はどうしてここに」
「まだ治りきっていないのです、さ、横になって」
女性が促すままに左近は再び身を横たえた。女性は布を絞り、左近の口元と手の甲を丁寧に拭いた。
「・・・かたじけない」
女性は笑みを左近に返した。
「さぁ、眠るのです。次に起きる時は傷は治っていますから」
とろけるような女性の声は、左近を急速に眠りの世界に連れ去った。
- 時を超えた絆
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