「よ、左近」
「んだよ」
少し拗ねた顔で左近が振り向くと、そこに進之助がいた。
「カバンに入んないんだよ、食べるか?」
「・・・いるかよ」
「2つ、2つでいいからもらってくれないか」
「いらねーって!」
進之助、左近のふたりは高校の女子生徒の人気を二分している。
ふたり並んで紙袋を担ぎ、季節はずれのサンタクロースのようだった。
「お前、いくつもらったんだよ」
「教えねー」
明らかに数が多いのは進之助。だが左近にはとっておきがあった。
「でも俺にはひとつでも十分なんだよ」
進之助の目が鋭くなる。
「まさか、お前、もう綾女と何か・・何かしたのかっ」
左近は匂わせぶりに笑ったが、実のところな〜〜んにも発展していない。告白をしたことはしたが、果たして届いているのか・・。
「ああ、かわいそうな綾女。前世からの因縁とはいえ、こんな奴に好かれてしまうとは」
「よせよ・・。まだキスだってしていないんだから」
「当たり前だろう!成人前の男女がみだりに口付けなど、俺が許さん!」
進之助はプリプリ怒りながらさっさと帰ってしまった。
「あれ?左近?」
綾女が声をかけてきた。左近の袋を見ると苦笑している。
「まるでサンタクロースだね。そんなにあったら、もういらないかなぁ」
上目遣いでそっと左近を見上げる。
「あーあ、残念。今年は左近のためだけに、ひとつだけ作ったのに」
ひらっとスカートを翻し、綾女は立ち去ろうとした。止まってちらっと左近を振り返る。それが左近のツボを突く。
「綾女、これはみんな義理なんだよ」
「そうかしら。それにしてはずいぶん手が込んでいたりラブラブメッセージも添えられているようだけど?」
左近はきりっと表情を締めた。
「俺が欲しいのは、綾女のチョコだけだ」
「ふーん、チョコだけなのね」
明らかに綾女はやきもちを焼いている。それに本人が気づいていない。
「まぁいいわ、味見しすぎて私はもういらないから、左近にあげる」
無造作に左近の前に出されたチョコは、気持ちがこもっているようなラッピングだった。
「サンキュ」
左近は受け取り、そのまま腕を引き寄せ、キスをした。現世で初めてのキス。
「ば、馬鹿!何するのよっ」
真っ赤になった綾女が手を振り上げるが、左近はその手を押さえて不思議そうな顔をした。
「俺、綾女に告白したけど・・?好きだって」
綾女はしばし考えていたが、思い出したようにさらに赤くなった。
「もう!左近たら!先に帰る!」
怒って足早に歩く綾女を見ながら、左近は苦笑いをしていた。
「でも、もう離さないからな、綾女」
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