季節は移り、綾女も成長する。
秋にはしっかりと歩けるようになり、言葉も増える。
「しゃこん」
初めて呼ばれたとき、左近は思わず抱きしめてしまった。
「しゃこん、いたい」
顔が潰れそうになり、綾女が抜けようとする。その様がまた可愛らしくて、左近は何度も綾女の髪を撫でた。
すでに腰ほどまで伸びた髪は、絹糸のようにきらめいている。顔つきもだんだん整ってきて、美少女の片鱗を見せている。
年が明けた頃から、左近は読み書きを教え始めた。もともと怜悧で素直なたちなのか、砂に水が染み込むように覚えていく。
屋敷に来てから1年だが、綾女はすでに3歳ほどに成長していた。
「左近様、1年で3歳とはやはり異常です。何かあるのでしょうか、あの姫様には」
夜も更けた頃、陣平が左近のもとを訪れていた。
「確かに早すぎるな。常人の3倍の速さで成長している。ということは、おそらく俺たちの3分の1の寿命でしかないのかもしれないな」
「では、15年ほどしか生きられないということでしょうか」
15年。左近はため息をついた。たったそれだけしかともに生きられない。すでに左近にとって、綾女は大事な存在になっていた。
そして、綾女の身元はまだわからないままであった。
- HIT記念
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