「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. HIT記念
  2. 31 view

妖刀絵巻1

時は平安。
春の気配が近づきつつも、まだ雪が降る日のこと。
後朝の文を交わして、夜が明けやらぬ牛車の中。
「あ、ふぅ~~」
大きく欠伸と伸びをし、その拍子にずれた烏帽子を直しながら、左近は朝寝をしようとした。
え・・ん、え・・・ん・・・
赤子の声が聞こえた気がし、左近は閉じかけた目をうっすらと開けた。
「左近様、赤子が泣いております」
陣平が報告してきた。
「赤子?俺にどうしろというのだ」
「この寒さの中、長くは持ちますまい。ここでお連れすれば、仏の慈悲もあると思いますが」
幼い頃から乳兄弟で育った陣平は、唯一左近に意見できる。
「それに、この赤子、たいそうな美人になるでしょうな」
左近は面倒ながらも、美人と聞いてそっと簾を開けた。
赤い衣にくるまれ、その赤ん坊は左近と目が合うと、ぴたりと泣き止んだ。大きな瞳で左近をじっと見つめ、笑い声を上げる。
「笑っている。左近様に笑っている」
陣平は驚いたが、もっと驚いたのは左近だ。今までの赤ん坊はひきつけを起こすほど泣きまくっていたからだ。
「俺に笑っているのか。そうか」
左近は赤ん坊が可愛く思え、抱き上げた。
コロン、と小太刀が落ちる。見慣れぬ紋が彫られている。少しまくれた衣の裾には、”綾女”と書かれていた。
「お前は綾女というのか、そうか」
赤ん坊の綾女はやがて左近の腕の中で眠ってしまった。
「この小太刀から見て、生まれは低くはないだろう。陣平、当たってみてくれ」
「はい」
陣平は引き受けたが、なかなか容易なことではなかった。

HIT記念の最近記事

  1. 大奥6

  2. 大奥5

  3. 大奥4

  4. 大奥3

  5. 大奥2

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ