「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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妖刀絵巻2

綾女の成長は早い。
屋敷に連れてきた時には、やっと首が座る赤ん坊だったが、桜が散る頃にはものすごい勢いではいはいをしている。
左近が帰宅すると真っ先に迎えに行く。それも超特急のはいはいで行くものだから、急には止まれない。
「うわっ」
左近の足に激突してやっと止まる。
「綾女はお転婆だな。どれ」
「あー、あうー・・」
抱き上げられ、綾女は左近に一生懸命何かを言おうとするが、まだ喋れない。
「今帰ったぞ。うん、少し重くなったようだね」
きっちりと切り揃えられた黒髪が、さらりと流れる。この時代、美しい髪は美人の代名詞でもあった。
「綾女はきれいな髪だね。美人さんだな」
左近の言うことがわかったのか、綾女は嬉しそうに笑い声を上げた。
「姫様の成長、常人よりもいささか早い気がします」
陣平は綾女を姫様と呼んでいた。
「ここに来た時はほんの赤ん坊だったのに、半年とたたずにはいはい、この頃はつかまり立ちも試そうとしています」
「少し早いかもしれないが、案ずるほどでもないだろう?」
左近はのんびりと答えた。
「それよりも、身元はわかったのか」
「それが・・。あの紋はいくら探してもないのです。この近辺はすでに調べ上げましたので、少し遠方を調べさせているところです」
「そうか・・・。どんな事情があってこの子を置いたかはわからないが、こうして可愛らしく成長していることをお知らせできたらと思っているのだ。ことが許せば、里心がつく前に、実の親のところに戻した方がいいと、俺は考えている」
左近の親はすでになく、家督は左近が少年のときに継いでいた。年の離れた姉がいるが、すでに他家へ嫁いでしまっており、実質左近は独身貴族である。
「この俺のもとで育っていくのはかわいそうな気がしてな・・・」
初夏を思わせる風が、眠っている綾女の頬を柔らかくなでていった。

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