明け方、左近は目を覚ました。
傍らには愛おしい綾女が静かに眠っている。
赤ん坊の頃から慈しんで育て上げてきた。そういえば、御所でも似たような物語が女房たちの間で読まれていたことを思い出す。
「ん・・」
綾女が寝返りを打ち、左近の方を向いた。長い睫が揺れ、その瞳に左近を映し出す。
「・・?」
いつも別に寝ていたはずの左近がどうしてそこにいるのか、とっさには理解できずにいる綾女。
「あ」
見る見るうちに赤くなる。それもそのはず、ふたりとも生まれたままの姿で見つめ合っていたからだ。
左近はくすりと笑って、綾女に口づけた。
そのままのど元を左近の唇が滑り降りると、鎖骨に咲いた赤いしるしに辿り着いた。
綾女の肌はきめ細かい。左近を知って、いくらか滑らかになっている。
「くすぐったい」
声を立てないよう、綾女が息で笑う。そんな綾女は子供のように無邪気だ。
「そろそろみんなが起き出すわ」
気にする綾女をやすやすと封じ込める。
「もう少しだけ・・」
左近は綾女の胸元に顔をうずめた。綾女は恥ずかしがって身をよじるが、かえって甘い声をあげる羽目になってしまった。
「姫様、左近様からのお文ですよ」
特別にしつらえた紙なのだろう、品のよい香りが漂う。
さっと目を通すと綾女は机に向かい、返歌をしたためた。
そのやり取りを乳母は目を細めて眺めている。綾女はわずかに頬を染め、文を使者に託した。
- HIT記念
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