「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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瞳に映る人5

廊下を曲がると左近にぶつかった。綾女の勢いに左近はよろけたが、しっかりと抱きかかえた。
「どうした」
「左近、私はどうしたらいい。あれだけ憎んで憎んで、殺したいと思っていた蘭丸なのに、もう違う蘭丸になっている。どれだけひどいことをしてきたのか覚えていないなんて」
左近は黙って綾女を抱きしめた。
「そんなのずるい・・・この気持ちはどうしたらいい・・」
左近は綾女の背中をゆっくり撫でた。
「お前の気持ちはよくわかる。俺もそうだった。だがあいつは妖刀に刺されて制裁を受けたんだ。だからもう、これ以上はいいんだ」
綾女の嗚咽がだんだん小さくなっていく。
「蘭丸に、話したのか?」
小さく頷く綾女。
「本当に覚えていないようで、私に仇をとれと、首を差し出してきた」
「いかん!」
左近は綾女を離し、蘭丸を捜しはじめた。
「左近?」
「あいつは、自害するぞ」
左近の言うとおり、蘭丸は重い気持ちを引きずって脇差に懐紙を巻いていた。
闇が濃くなっていく西の空を仰いだ。
「父上、兄上、力丸、坊丸。意気地のない私を笑っておられるのでしょうね。母上、先に逝く不孝をお許しください」
襟を割り広げ、その引き締まった腹部に脇差を当てようとした時手裏剣が脇差をはじいた。同時に左近が蘭丸に体当たりをする。蘭丸は押し倒されてしまった。飛んだ刃物を左近は綾女に渡す。
「なぜだ。なぜ償わせてくれぬのだ」
「お前には生きて償いをしてもらわなければならないからな。死んで償ったつもりになるほど、甘くはない」
左近が蘭丸を見つめてゆっくりと脅した。
綾女は刃物を蘭丸に渡した。
「おい」
左近が諌めようとするが、綾女はそれを制した。
「蘭丸。一度ならず二度までも生きながらえた。これからどうするか自分で考えるんだな。これで首を掻き切っても一向に構わないが、それだけの能しかなかった奴だとお笑い種になるぞ」
そしてさっさと引き上げていく。
「恐ろしい奴だな」
蘭丸がため息混じりに呟く。左近も頷いた。
「綾女。惚れ直した!」
蘭丸の元気満ち溢れる声に左近はぎょっとして振り向いた。

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