「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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君を慕いて・・10

翌日も天気はよく、綾女は昨日と同じ場所で柱にもたれかかっていた。
左近の部屋のすぐ外だ。左近は部屋を出ようとしたが、そのまま中にいた。
「こんなところで。風邪を引くぞ」
高久が来て、声をかけた。
「寝てはいない・・」
綾女の隣に腰掛ける。
「昨日、左近殿と話した。お前の太刀筋を褒めていたぞ」
「そう・・」
力がない声。
「どうしても・・香澄の里を思い出してしまいます。平和だった頃の里の暮らしを思い出してしまう・・」
「俺と話すと思い出してしまうのは辛いな・・」
綾女は顔を覆った。高久は優しく綾女の背を撫でた。しばらくそうして、綾女は顔をあげて高久を見た。
「ごめんなさい・・夕べ寝ていなくて、気が高ぶっただけ・・」
「泣けばいいよ、ずっと我慢してきたんだろう?」
「いいえ、もう大丈夫」
高久が綾女を抱き寄せる。
「好きだよ、綾女」
綾女の体がぴくっと動いた。そっと高久を押し戻した。
「私、目に焼きついている光景があるんです。高久様との祝言で着るはずだった、白無垢の内掛け。それが炎にのまれていく様をはっきりと覚えているんです。私はそれを見たとき、これから生きるには女を捨てなければいけないと強く思ったんです」
「でも今はそう切羽詰った時ではないぞ」
「ええ、わかっています。ある人のおかげで少しずつ私は自分を取り戻せてきています。身なりはまだこれですけど」
綾女は自分の格好を見た。
「その人は、世の中の非情をいやというほど知った人。寂しいけれどとても暖かい人」
綾女の表情は優しく、声も愛おしそうにその者のことを語った。
「左近殿のことか」
綾女は黙ったままうなずいた。
高久は決意した。
「そうか。お前がそう決めたのなら、もう俺は何も言うまい」
「高久様」
「お前のことを兄代わりに見守っているぞ」


左近は部屋の中で綾女と高久のやり取りを聞いていた。
高久が立ち去ってしばらく・・。
「左近、そこで聞いていたのだろう?」
音もなく襖が開き、左近が姿を現した。
「部屋から出ようとしたら、そこで話が始まったからな。聞きたくなくても聞こえてきた」
綾女は立ち上がって左近を見上げた。
「左近はどうだ?」
左近はふっと笑って正面から綾女を抱きしめた。耳元で甘く囁く。
「好きだよ・・」
そして耳たぶに軽く口付けを落とした。

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コメント

    • かおり
    • 2008年 2月 26日 11:36pm

    先ほど一気に読んでしまいました。読みたかったお話そのままですわ☆
    本当に有難うございました!!
    高久と左近の間で揺れ動く綾女、照れて左近の頬を叩くところなど、とても可愛いですね。

      • 紅梅
      • 2008年 2月 26日 11:57pm

      リクエスト、ありがとうございました。
      読みたかったお話でしたか。ご期待に沿えるものが書けて安堵しました。
      もうちょっと甘くしてもよかったかなと思いつつも、これでいいのだと悩みました。
      次回は15000HITです。また募集させていただきますので、よろしくお願いいたします♪

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