綾女はタイムカードを押し、外に出た。
月は煌々と輝きを増し、綾女を照らしている。足元には濃い影が伸びていた。
玉砂利を踏む足音。いつしか綾女だけではないもうひとつの足音も聞こえてきた。
「誰?」
立ち止まり、振り向かずに声だけで尋ねると足音は近づいてきた。綾女の前に立ち止まる。
「さっきはすまなかった。驚かせてしまって」
「左近?」
口に出すと、懐かしさでいっぱいになった。左近を見つめる綾女。身体が自然と左近に擦り寄り、優しく抱きしめられていた。
「思い出してくれたのか。俺はずっと綾女を探していた」
「私もあなたを探していたのかしら・・・。月の下で亡くなった人があなたと重なる気がする…」
左近は月を見上げた。あの時と同じ望月。
不思議な巡り会わせから1年。
月光のもと、左近が何度も夢を見たあの場面が現実となった。
きらめくドレスに身を包んだ綾女は左近と結ばれ、永遠の愛を誓い合った。
だが幸福な時間は束の間にしか過ぎなかった。
- HIT記念
- 24 view
この記事へのコメントはありません。