綾女は自分が手術を受けたことを左近に話していた。術後5年までは再発の危険性があることも話していた。
「気にするな」
綾女をいたわるように左近は優しく愛した。そのたびに綾女は申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
「ごめんなさい、左近・・」
そのためか、綾女は左近を拒むことが多くなってきた。
同時期、綾女はひとりで告知を受けていた。
診察室でMRIの画像と血液検査の結果を聞く。
「残念です」
医師の言葉を綾女は正確に受け止めていた。
再発。転移。
すでに肝臓に大きな腫瘍ができており、骨転移も進んでいた。
「内臓だけでなく、血管にも浸潤すれば血流障害がおき、壊死が起きてくるでしょう。バイパスを作ることもできますが・・」
医師は言葉を濁した。
小さい頃から2回手術をし、その担当だった医師。綾女は言った。
「先生、いいんです。思うことをおっしゃってください」
医師は辛そうにカルテを見、画像を見た。
「根治は不可能です。バイパスを作ったとしてもすぐにあちこちの血管で浸潤してしまうでしょう。私の見解では対症療法と痛みのコントロールしか・・」
「あとどれくらい、生きられますか」
「それは、私にもはっきりした期間はわかりません。でもこれだけは・・おそらく、来年の桜は見られないかと」
綾女は顔を上げ、医師を見つめた。とても穏やかな眼差し。
「先生、ここのホスピスに入院できますか」
- HIT記念
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