一度心停止したものの、綾女はすぐに意識を取り戻した。しかし予断は許されず、ICUに入った。
「出産で心臓が一度止まりました。経過を見ます」
医師は左近にそう告げた。
「左近、胸が張って痛いの・・。赤ちゃんにお乳あげたい」
意識が戻った時、綾女はすぐにそう言った。左近はそれはできないと辛そうに答える。
「搾乳しますよ。大事なおっぱいですものね」
看護師が初乳を搾乳し、子供のところに持っていってくれた。
「綾女さん、赤ちゃんすごい勢いで全部飲んだのよ。早くよくなっていっぱい飲ませてあげてね」
「ありがとうございます・・」
綾女は目に涙を浮かべてお礼を言った。
2日間いたICUを出、綾女は一般病棟に移った。
すぐに子供を見に行く。誰が見てもひときわ可愛い。綾女似なのか、黒い髪。
「あ」
綾女が胸を押さえた。
「どうした」
「お乳が・・」
日の射し込む部屋で、綾女は小さい赤ちゃんを抱き、乳を含ませた。よほどおなかがすいていたようで、赤ちゃんはえくぼを作りながらたくさん飲んだ。
「あら、えくぼがある」
「かわいいな」
「名前・・決めたわ。優花。優しい花の香り」
「いい名だ」
左近はそっと赤ちゃんの頬を撫でた。
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