翌日。
家の中をきれいに掃除していると昨日の女性がやってきた。
「おはよう。眠れた?あらあらピカピカに磨いちゃって。あのね、少しだけどご飯を持ってきたの」
「おはようございます。何から何まですみません。私は綾女、あの人は左近といいます」
「いい名前だね。私は弥生。ちょっと離れているけど隣だから、何でも聞いてよ。旦那さんの具合はどうなの」
「おかげさまでゆっくり休めました。ありがとうございます」
「それならよかった」
左近の体力と綾女が調合した薬で、2週間ほどして怪我は完治した。
「あれだけの怪我がもう治ったの?すごいね、若いんだね」
弥生をはじめ、最初に左近を診た人も驚いていた。
左近の怪我はそれほど大きなものだった。
「皆様のおかげです。何かお礼をしたいのですが何もなくて」
「あんたたち、どこか行くところがあるの?」
綾女は左近と顔を見合わせた。
「いえ・・・私たちの生まれた里も戦で無くなってしまいました」
「じゃ、ここに住んだらいいわ。あの家、そのまま使ってよ」
すっかり好意に甘える形で里に住むこととなった。
「左近、私はここで薬の調合をして皆の体調管理をしようと思う」
「そうか、何もしないわけにはいかないしな」
「ちょうど裏がいい日当たり具合だから、そこで栽培すればいい。明日にも山に行って見てくる」
「俺は・・・ここを守る。お前を守りたいし、俺たちを受け入れてくれた里も守りたい」
「そうだな」
「そういえば、弥生殿や他の皆は俺たちを夫婦だと思っているらしい」
綾女の瞳が揺れた。左近は綾女の髪を解いた。
「俺の前では、髪を解いていてくれ」
「なぜ?」
髪を下ろした綾女はきれいな女性になる。目元が柔らかくなり、その瞳に左近は常に自分を映したかった。
「俺の前では、綾女でいて欲しいからだ・・・」
唇を重ねる。だが今までとは違った。熱くてねちっこくて綾女を蕩けさせるような口付け。息を継ぐ間も惜しんで、左近は綾女の唇を味わい尽くす。
「は・・・っはぁ、く、苦しい・・・」
酸欠になり、大きく息を吐き出すと、左近が軽く笑った。
「息を止めていたら苦しいのは当たり前だ。鼻で息をするんだ。いいか」
また唇が襲う。綾女は言われたとおり息を止めずに左近を受け止める。左近の手が綾女の髪に触れる。その手が綾女の背中を支え、腰紐を緩めようとした。
「なにを・・っ」
一瞬綾女は抗う。だが、左近に身を任せた。もう、素直でいたい・・・。
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