「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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夫婦になるまで5

ずっと引っかかっていることがある。
左近は安土以来、思い出したかのように「夫婦」と言うが、綾女に向かってはっきりと言ってはいない。
だから綾女もどう返したらいいのかわからない。
里ではふたりのことを夫婦だと思っているらしい。
一応、体は結ばれたが、あれで本当に夫婦だといえるのだろうか。
向かい合って食事をしながら、綾女は左近を見て考えていた。
「なんだ」
ひしひしと視線を感じて左近が箸を止めた。
「考えていたんだ。私と左近は、その、どういう関係なんだろうと」
「何を今更」
「今までは同志だっただろう?だけど、今はどうなんだ?確かに、あんなことして一応・・・だけど・・・」
床にのの字を書きそうな勢いで綾女が照れている。
「俺、言ったよな。生きてお前と夫婦になりたいと。あの蓬莱洞で」
「うん」
「で、生き延びた。だから夫婦だ」
「私は返事をしていないぞ」
綾女はまっすぐ左近を見つめる。左近は少し考えたが、たしかに綾女の返事の記憶がない。
「そうだったか?」
「そう!だって、あの時は痛くてそれどころじゃなくて返事なんて考えもしなかったから」
「えー。俺はすっかり夫婦のつもりだったぞ。だから綾女も俺に抱かれたんだろうが」
「私はただ、完治した元気な左近が嬉しくて」
「・・・・・」
「・・・・・」
左近は箸と茶碗を置いて正座をした。綾女も慌てて居住まいを正した。
「綾女。俺たちは死ぬかと思ったあの安土を生き延びた。これはもう運命だと思う。俺と夫婦になってくれないか」
「はい」
綾女は輝くような笑顔で答えた。
ふたりはそのまま笑顔で食事を済ませた。

「綾女」
「綾女」
「綾女~」
なんということか、あまりの嬉しさに左近は綾女のあとをついて回る。
食器を洗っているとくっついてくるし、布団を敷いていると押し倒そうとする。着替えを覗こうとする。
あのクールな左近が綾女一色に染まってしまった。
「だってぇ~、大好きなんだも~~ん♪」
その言葉をいつ言ってもおかしくない雰囲気。
「私、承諾してよかったのだろうか・・・」
ちょっと不安になる綾女だった。

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コメント

    • よしこ
    • 2016年 5月 23日 10:58pm

    紅梅様
    はじめまして。先日何十年ぶりかに突然妖刀伝を思い出し、懐かしくなり、検索して思いがけず紅梅様の作品にたどり着きました。嬉しい話の数々に感動し一晩で読破し、今また改めてゆっくり読ませていただいています。妖刀伝の最期があまりにも悲しく辛すぎたのでこちらの作品の数々のお話で本当に心が救われました。ありがとうございました。
    当方ガラケーなのでツイッターの方は拝見できませんがまた更新されるのを楽しみにしております。

      • 紅梅
      • 2016年 6月 07日 2:10pm

      よしこ様
      お返事が遅くなりすみません。コメントありがとうございました。
      一晩で読まれたのですか?驚きとともに、嬉しさでいっぱいです。本当にありがとうございます。
      ここしばらくは更新できていないのですが、それでもこうして訪れてくださるのは嬉しい限りです。
      また遊びに来てくださいね。

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