「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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生きる14

左近の左腹部には大きな傷跡がある。
綾女はそっとそこに手を触れた。
「生きていてよかった」
安心した声が左近の胸元からした。左近は少し体を離し、綾女を見る。
「どうした?」
「左近が、生きていてくれてよかった」
綾女は左近を見ずに言葉を続けた。
「左近が、私自身を取り戻してくれた」
「そうか?大したことはしていないがな」
「いいえ」
綾女は左近を見上げた。
「私は弱い人間だから、きっと一人では生きてはいけない。もしあの時左近がいなくなっていたら、さまよい続けて、人の心を失っていったに違いないから」
「・・・・・・・・・・・・」
「ありがとう、左近」
綾女は涙を流した。
「よく、泣くな・・」
「今だけ・・」
左近は再び抱きしめた。
「いいさ、泣けよ。ずっと泣きたくても我慢してきたんだろう?」
綾女の肩が震える。左近の言葉で感情のたがが外れ、嗚咽が聞こえてきた。左近は黙って綾女の涙を受け止めていた。
やがて綾女は泣き濡れた瞳で左近を見つめた。
「もう大丈夫。ありがとう、左近」
そして見せた笑顔。眩しいくらいに美しい。綾女と出会って、初めて見た。
朝日がさっと差し込んできた。
そこに浮かび上がる綾女。夜着をゆったりと羽織り、朝日を背にし、左近を見上げている。まるで朝日に溶けていきそうな天女のようだった。対する左近は朝日を正面にし、茶色い髪は一部金色に光り、端正な顔貌を浮き立たせている。お互いに見つめあい、ゆっくりと深く唇を合わせる。
今、2人は心も体も結ばれ、ともに生きることを誓い合った。

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