綾女は翌朝、ゆっくりと目を覚ました。
体中がだるい。
のぼせと、体力の消耗が原因だった。
家の中には左近の気配はなかった。もちろん、気配を消すのが綾女よりも上手なため、安心はできない。
きちんと夜着も着せられている。
「あ」
確か昨夜、左近に散々高みに上り詰めさせられて・・何も身につけていなかった。
その自分を家まで運び、体を拭き、着物まで着せたのは左近だろう。
あられもない姿を左近に見せてしまい、挙句の果てに自分自身を愛していたことまで指摘されてしまった。
「恥ずかしいことを・・」
綾女は少しおびえたように自分の肩を抱いた。綾女の首筋には、左近がつけた華が咲いていた。
寝床から立とうとして、足腰に力が入らなかった。横座りに座り込んでしまう。
「立て・・ない・・」
柱のそばまで行き、震える足で立とうとした。その時、襖が開いて左近が現れた。忍び装束なのは、仕事を片付けてきたからだろう。
「何をしている」
柱につかまり、やっと立っている綾女は左近から顔を背けた。一体誰のせいだと思っているのか、この男は。
「まったく・・」
綾女の体がふわっと抱き上げられ、左近の腕の中にいた。困ったような顔で綾女を見ている。綾女の頬が染まり、鼓動が早くなる。左近は綾女を布団の上におろした。
「今日一日寝ていろ」
そのまま左近は部屋を出て行った。
綾女はうとうとしていた。不意に体の上に重さを感じ、目を開けると見知らぬ男がのしかかっていた。
「な、何者」
すばやく枕の下に仕込んでいたつぶてを投げようとするが、両手を押さえられてしまった。足で蹴り倒そうとするが裾が乱れただけで却って男の目を楽しませるだけになってしまった。
「こんないい女が、誰もいない家で転寝なんて、無用心だな」
裾から覗いた白い足を舐めるように見ている。綾女は気味が悪くて仕方がなかった。足に意識を集中する。いちかばちか。膝を高く上げて男に一撃を与えた。
「ぐ・・ふぅっ」
男は手の力も抜き、転がった。綾女は男の下から這い出し、妖刀を男の喉に当てた。
「女だからと侮るな。出て行け」
すさまじい殺気。美女なだけにいっそう凄みがあった。男は逃げていった。
- あの時代
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