「元気でね」
「メールちょうだいね」
私、綾女は親の転勤に伴い、東京からここ、安土に引っ越してきた。
この春から高校生になる。
「着いたぞ」
父の声に私は車から出た。
「わぁ、一戸建てなのね。なんか広ーい」
母は早速様子を見に来た隣の奥さんと挨拶をしている。私も挨拶をしようとそばに行くと、そこの息子らしき人が帰ってきた。
「ええ、東京から来たんですよ。これは娘の綾女。この上に兄がひとりいますの。ほら、お父さん、お隣の日向さんよ」
「お忙しいからいいですよ。まぁ、きれいなお嬢さんですね。ほら左近、挨拶なさい。うちの息子です。確か綾女ちゃんと同じ高校だったかしら」
「安土高校です」
「あらやっぱり。うちは3年になるんですよ・・」
とりとめなく続く会話に私はそっとそばを離れた。
家の中では兄の進之助がてきぱきと動いていた。
「ああ、来たな。これは全部お前の荷物だ。自分で運べ。母さんは?」
「ご近所に挨拶に回ってる。まだお隣よ」
兄は窓から母を見てため息をついた。
「あれじゃ、日が暮れるな・・・」
父も母を見ていた。
「父さんが一緒に回ってくる。片付けておけ」
「はーい」
- 現代版
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