春休みは駆け足で過ぎていき、入学式当日になった。
「綾女。あなた新入生代表なんでしょ?大丈夫なの?」
「うん」
式典は11時からだ。私は代表宣誓をすることになっていた。中学の卒業式でも答辞をし、何かと言えば代表のお鉢が回ってくる。
「そろそろ出なきゃ。行くわよ、綾女」
「はーい」
パンツスーツを着こなした母は、歩くのがとても速い。通勤の時はウォーキングシューズをはき、オフィスでは9センチのヒールを履いている。
「何でそんなに速いの?ヒールは履かないの?」
「時は金なり。ヒールは傷むから履かないの。若いんだからもっとすっすと歩きなさい」
引越し当日ののんびりした母とは、まるで別人。
「でも今日は仕事じゃないんだから」
「そうだけど・・。スーツ着るともう、仕事モードになっちゃうのよ」
滞りなく入学式も終わり、ふたりでバスケットのコートのそばを通ると、左近がいた。
「あら、左近君よ。ほら」
「本当だ。バスケ部なんだね」
隣の道場でも左近が竹刀を振っている。
「あれ?君、もしかして隣の綾女ちゃん?」
バスケ部の左近が声をかけてきた。
「は、はい。左近さんですよね?」
「左近は剣道部だよ。俺は喜平次。ちなみに俺たち双子なんだよ。綾女ちゃん背が高いし運動神経よさそうだから、バスケ部に入れば?」
「ちょっと考えさせてください・・」
その様子を左近はじっと見ていた。
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