「ただいま。あら、すっかり片付いたのね。あなたたちが組むと早いから助かるわ」
「ああ。あとは母さんの荷物だけだよ」
たった数時間で見事に兄は片づけを終了していた。そうじもすみ、天ぷらを揚げている。
「そばは顔を見ないと茹でられないから、こっちを先にしておいた」
「あら、ありがとう。食器は綾女が片付けてくれたのね」
「うん」
母はのんびりと鼻歌を歌いながら荷物を片付け始めた。
お風呂から上がり、少し暑かったので窓を開けると、安土山が見えた。気持ちのいい風が吹いている。
「もう夕方か・・・。あっという間だったな」
そっと呟くと、昨日別れた友達の顔が浮かんできた。とても懐かしく、目頭が熱くなった。
不意に斜め向かいの窓が開き、先ほどの左近が現れた。
「あ」
頬を涙が流れおちたのを見て、左近は少し驚いたようだった。
「あ、こ、こんばんは。やだ私ったら」
私は慌てて窓を閉め、床に座り込んだ。
部屋の中はすっかり暗くなっており、その中で携帯の明かりがいくつか点滅していた。私はメールの返信をしはじめた。
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