「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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ファミリー6

その桜を何度眺めたことだろう。
毎年我が家と隣の日向家でお花見をしている。
左近と喜平次は高校卒業後、ひとり暮らしを始めており、めったに帰ってこない。たまに帰ってきていると聞いても、私はもう何年も会っていない。
「女の子がいるっていいわね。うちは息子だから、すぐに親元を離れてしまって寂しいくらい」
日向のおばさんは時々お茶のみをしながら、母にこぼしている。
「うちはまだ家にいますけど、あまり居つかなくてね。朝は早いし夜は遅いし、休みの日も家にはいないし。どこで何をしているのやらわからないわ」
そうしてふたりでため息をつき、笑いあっている。
「今度のお花見には久しぶりに戻ってくると言ってきたんですよ」
おばさんの顔が嬉しそうに輝いていた。
あの時と同じ風景、風。
その日の朝、私は安土山まで散歩に出た。
なぜか左近のことをしきりに思い出し、懐かしい気持ちになっている。
高校に入って私は剣道部に入部した。同じ部活とはいっても、3年生は夏の試合が終われば引退だから、同じ道場にいることは稀だった。
隣の家なのにほとんど言葉も交わさないまま、左近は翌年の春に家を出た。
もうあれから何年たったのだろうか。
今では私のほうが安土に詳しくなってしまった。
あの時に撮った左近の写真。私の宝物。
「宝物?」
自然とそう思い込んでいた自分にはっとする。もしかして左近のことが・・?
足が、石段の前で止まった。座り込んでしまった場所。左近がかすかに顔を赤らめて私を立たせてくれた場所。
思いを馳せる私の髪を、優しい風が揺らした。

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