乗客も乗員も息を潜めてハイジャック犯を警戒している。窓を閉められ、明かりも消され、暗く暑い空気が息苦しかった。
先ほど転んだ男性が綾女の近くにおり、脂汗を流している。
「大丈夫ですか?」
綾女が小さい声で聞くと、男性は膝を押さえていた。うめき声が出る。
「おいそこ、黙れ」
男の頭に銃が突きつけられる。綾女はきっと犯人の男を睨んだ。
「私は医者です。この人の手当てをしますがいいですか」
犯人の男は綾女を舐めまわすように見た。
「本当に医者かよ。姉ちゃん」
綾女は男を無視して、膝の手当てをし始めた。
「膝の筋を痛めたのね。ちょっと固定しますからね」
綾女は乗務員からテープをもらい、テーピング固定した。
「これでしばらくは大丈夫」
膝を痛めた男は綾女に頭を下げた。
左近は北海道で訓練をしていた。
もう少しで綾女に会えるという矢先、ハイジャックのため緊急要請がかかってしまった。乗客名簿には綾女の名前が載っている。
「くそっ」
左近は悪態をついた。
手早く装備を身につけながら現場に向かう。
「日向班長、準備完了です」
「よし」
左近は狙撃の準備をもう一度確認した。すでに制圧班は航空機の直下に迫っている。
- 現代版
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