それからどれくらいの時が流れたのか。
妖刀の光で日本全国に散った妖魔は壊滅した。
いまや妖刀の存在そのものがもう必要のない世の中に移り変わろうとしていた。
「綾女」
呼ばれた女性が振り返る。若く、美しい。
「なぁに、左近」
対する男性も若い。
ふたりは人であるようで人ではなくなっていた。妖刀の力が死も病も忘れた体にしてしまっていた。そのため、数十年おきに土地を移り住まなければならなかった。
「今度はどこへ行こうか」
「そうね・・。住んでみると、ここが一番いい土地だったと、いつも思うのよね」
「でも俺たちは年をとらないから、ずっといると怪しまれるぞ」
「それはわかっているけど」
綾女は部屋の中を見た。引っ越してきたばかりの荷物が置いてある。
「妖刀を、手放したら・・・私たちはどうなるのかしら」
「さぁな」
「そろそろ、私も人として生きたくなってきたわ」
「同感だな」
古い土地に住むと周りの目が気になった。そのため余り人と接触しない都会を転々としてきた。今目を上げると安土山が見える。
「なんとなくね、ここでなら人として生きられるような気がしたの。後世に何か残せるような気がしたの」
「ここにはあの時以来来ていなかったな。426年ぶりか」
左近は綾女の肩を抱いた。
「久しぶりに行ってみるか」
- 時を超えた絆
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