桜が咲く安土山は静かに佇んでいた。
「この石垣、変わらないわね。あら、百々橋口からは立ち入り禁止よ。もう」
「おい綾女、だからといって柵を乗り越えるんじゃない」
あの頃と変わらず、身軽に石段を登ろうとする綾女を左近は止めた。ふわっとしたミニスカートから見え隠れするものも、左近は自分以外に見せたくはなかった。
「入山料500円・・」
「大人ふたり」
「はい、1000円ね。途中急な石段があるからそこにある杖を使っていいですよ」
もちろんふたりに杖は必要ないが、いつものように軽々と登るわけにも行かなかった。ゆっくり登っていく。
「すっかり変わっちゃったわね」
綾女がため息をつく。道もあちこち制限されてしまい、物足りなかった。左近は綾女の後ろを登っていく。美人できれいな足のうえ、ミニスカートとくれば、嫌が応にも注目されてしまう。だが当の本人はまったく気づかない。
「ちょっと左近、どこ見てんのよ」
「俺だって見たくて見ているわけじゃないっ(本音は嬉しいけど)」
傍から見ればじゃれあいの他に何とも言えないが、ふたりは天主跡に着いた。
「案外、狭いのね」
石垣を登ると、遠くに琵琶湖が見えた。あとは広大な水田。当時は琵琶湖に安土山が半島のように突き出していた。目を閉じれば当時の凄惨な様子がはっきりと思い出せる。燃え盛る業火、血の臭い。おびただしい死体と死臭。あの時左近がもし覚醒していなかったら、今ここにいるのは自分だけだったかもしれない。いや、そもそも自分が存在していたかも確かではない。
「どうした」
綾女はきゅっと左近に擦り寄った。左近が優しく抱きしめる。
「昔を思い出しただけ。私たちの他に誰も見たり聞いたりしていないことなんだよね」
あ、と思いついた。
「ね、左近。書こうよ。私たちのこと、妖刀のこと」
「え?」
「私、見つけた気がする。後世に残せるもの。書くことによって私たちの役割が見えてくるかもしれないよ」
「そうだな、やってみるか」
後日。
某サイトにてその話が載ったとか載らないとか。
安土は黙してその歴史を語らず。
- 時を超えた絆
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帰宅してこちらを訪れると、続きのお話ができて完結してました@@! いつもながら紅梅様の筆の速さには驚きです。
覚醒して永遠の命と愛を得た二人。人間でなくなっても悲壮感は無く、このまま幸せになったことでしょう。
私も彼らを祝福したい気持ちになりました。
追記:10話も読ませて頂きました。あまりに官能的でビックリ*・・* きっと今日は眠れません。
10話、びっくりされましたか。
あれは冒険だと自分でも思っています。でも結果的に載せちゃいましたけど。
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時を越えて愛し続けることができるのはあのふたりだから、あのラストだからできることなんですよね。