安土城内。
エスプレッソカップで濃い液体を飲む男、信長。
「まずっ」
その言葉に蘭丸以外の者は額を擦りつけんばかりに平伏した。
「これはなんだ。けったいなまずいもの」
「上様、それはチョコレートでございます。南蛮の製菓会社が作り出したもので、珍しいからと奥方様が上様に差し上げるように・・」
”奥方様”の言葉を聞くと、信長はふと表情が強張った。
「もうよい、さがれ」
力ない声に家臣たちはそっと目を合わせ、そそくさと退出した。
「お呼びですか」
正室の帰蝶が部屋に入ってきた。家臣たちには内緒だが、天主に時々帰蝶を呼ぶことがある。
「先ほどのものがお気に召さなかったようなので、趣向を変えてみました」
小さな箱にチョコレートの粒がいくつか入っている。
「そちはよく色々なものを作ってはわしに毒見させているようだな」
言いつつも、信長はチョコを口に入れた。
「そんな毒見なんて滅相もありません。上様は天下人なのですから、物の流通も最新のものでなければなりません」
「ほう、聞こうか」
帰蝶は信長を覗き込んだ。
「なんだ?」
「お味は?いかがでした?」
「・・・少し苦味はあったが、先ほどのものと違い、食えた」
「でしょう?少し乳と砂糖を足したのですよ。ぬるま湯に桶を浸けてその中でゆっくり味を調えますのよ。それで固めたら、こうなって」
少女のように嬉しそうに話す帰蝶を、信長は微笑んで見つめていた。
そのエピソードがあったのかなかったのか。
安土山は、黙して、語らず。
- あの時代
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こんにちわ。
あ〜、先見の目があった信長だから、生涯に1回くらいはチョコを口にしてそうですね。
先日、あるTV番組で、固形のチョコは江戸時代になってからとか言ってました・・・すると「なんだこれは」の方が、現実に近いのかな?
帰蝶の尻に敷かれてる信長・・・見たかったです(笑
コメントありがとうございます^^
チョコレートははじめドリンクタイプだったそうです。で、だいぶ苦かったそうです。
今でも、カカオ90%とかいうチョコありますよね。私は70%くらいなら何とか…。
帰蝶は子供こそ成しえませんでしたが、一説には本能寺の変時も共にいたそうです。