「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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同志8

それから幾年経ったことだろう。
3人だった影忍はいまや1人となり、ただ妖魔を追ってさすらいの旅を続けている。身を寄せる里もなく、野に眠る。
・・寂しくはないのか、綾女・・
いつもの”風”が、綾女に語りかける。
「そうだな・・。もしもあの時、お前の気持ちを受け入れていたら今の私はいないだろうな」
・・いつまでさまようつもりだ?・・
「最後の一匹を狩るまでだ」
・・仇討ちはとうの昔に済んだはずではないか・・
「この妖刀の光が輝き続ける限りだ。でも、もうそろそろ終わりにしてもよい頃合だろう」
濃い霧が森を覆いはじめていた。そしてその中に潜む妖魔のにおい。
「話はまた後でな。会えて嬉しかったぞ、左近」
風が一瞬綾女を抱きしめるように動き、消えた。
妖魔の変貌が進んでいく。
綾女は妖刀を構え、気合をこめて振り下ろした。
凄まじい青い光とともに断末魔の叫びを上げながら妖魔が消えていった。
ズクン!
綾女の体が鼓動とともに動いた。
最後の一匹が目を覚まそうとしている。
「もう、耐え切れぬというわけか」
綾女は脂汗を流しながら呟いた。
長年妖魔の血と気を浴び続けてきた体は、いくら影忍の血を引いていても余りあるものになっていた。いつしか妖魔の種が棲みつき、血肉を糧にして少しずつ成長してきていた。
「これが私に残された最後の一匹・・」
綾女は血を吐いた。もう肺まで妖魔の気が侵食してきている。意識も遠くなってきた。
綾女は気を保ちつつ、空をあおいだ。森の中はすでに暗いが、空はいくらかまだ明るさが残っていた。
「左近・・今、参ります」
綾女の瞳が一瞬愛おしそうに細められ、そして今まで以上に青く光を放つ妖刀を腹に刺した。
森が昼間のように明るくなり、徐々に光は闇に溶け込んで消えた。
あとには綾女が結っていた髻の紐が、落ちているだけだった。

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コメント

    • かおり
    • 2008年 2月 26日 12:15am

    自害で定めを全うした綾女。髪を切り最期まで己の生き方を貫いた彼女を、痛ましくも又美しいと思いました。左近を想いながら逝った彼女は、幸せな気がします。

      • 紅梅
      • 2008年 2月 26日 10:07am

      この綾女の最期が、妖刀を持つ影忍の生き方らしいと思います。
      人に対して非情でもあり、それを自分にも課す。ある意味”天晴”な生き方ですね。

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