「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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桜吹雪2

左近は剣の指南役として里長の家に通っている。
「左近先生」
里の子供たちが集まってきた。けして愛想はよくないが、左近は子供たちの面倒をよく見た。
「切っ先を離すな。間合いをよく見ろ」
「やぁぁっ」
その様子を綾女は見ていた。
里長は医師でもあり、綾女はそこで医術を教わっていた。まだまだ助手だが薬の調合は完璧であり(影忍だから当然だが)、簡単な処置なら行うことができた。
「長殿は、安土の悠庵殿の直弟子だったと聞いておりますが」
「いかにもそうだが」
「では、内臓を縫ったことはおありですか」
長は奇妙な顔をした。
「それはあるが」
まだ二十歳そこそこの娘に聞かれ、長は綾女に興味を持った。
「実は、左近は悠庵殿に助けられたのです。私はただそばで見ているしかできなく、歯がゆい思いをしておりました。ですから、今度は私が助けたいのです」
長は庭で剣術を教えている左近に目をやった。とてもそんな瀕死の重傷を負っていた者には見えなかった。
師匠の腕もあるが、大半はこの娘の看護が効を奏したのだろう。
「教えて差し上げましょう。明日から頼みます」
長は穏やかに承諾した。
いわゆる飛び込みでの就職活動だったが、綾女も左近も忍びの仕事がないときは長の家に通っていた。
「先生!」
若い男が駆け込んできた。
「どうしました?」
長は往診で出かけており、綾女しかいなかった。
「腕が痛いんだ、先生はいないのかよ!」
「先生は往診に出かけています。ちょっと診せて下さい」
「あんたが診るのか?」
「そうですよ」
「女に何ができる、先生を呼べよ!」
男は怒鳴りまくった。綾女はあきれたが、黙っていた。見た限り、ただの脱臼だろう。
「痛いんでしょう?」
「決まっているだろうがよ!」
「私なら治して差し上げられるが、私が嫌なら先生のお帰りを待つしかありませんね。夕方まで」
男は綾女を睨みつけた。腕は痛いが、この女・・相当いい女だ。
「よし、診させてやる。だけどな、治らなかったらお前を…ぎゃああああ!」
男の口上を聞きもせず、綾女は足で男の上体を抑え、肩の関節をはめた。
ガキィ!
いい音がし、関節がはまった。綾女は手早く三角巾を男の肩につけ、腕を固定した。
「なにすんだよ!いてぇじゃないか!」
薬を取り分けていた綾女は男を見た。
「まだ痛いか?」
男はふと気がついた。痛みが軽くなり、腕も元の位置に戻っている。
「いい男が肩が外れたくらいでみっともない。3日間は固定しておけ。それとこの丸薬は炎症止めだ。痛くなったら食事の後に飲むんだ」
男は目を丸くして綾女を見ていた。自分より華奢な小娘がいとも簡単に荒治療をしてのけている。汗ひとつかかずに。
「いいか、3日間の間は肩を動かすな、薬を飲み続ける、酒は飲むな。それを守っていれば治る」
男は綾女に見とれていた。
「あーあ、弥助兄ちゃん、綾女姉ちゃんに惚れちゃったよ」
剣術を中断して子供たちが笑いあった。

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