しばらくたって、弥助が長のもとを訪れた。暴れていた時とは違い、快活な好青年だった。
「あの時は痛くて我慢できなくて、こちらの方に大きな声を出してしまいました。まことに申し訳ない」
「肩はもういいのですか」
「ああもう、大丈夫です。これで仕事もできるし、綾女先生のおかげですよ。世話になりました」
弥助は礼を述べて帰っていった。
長は笑いながら綾女に向き直った。
「なかなか豪胆な治療だったようですな。まぁ、それくらいがあいつにはちょうどいいでしょう」
「ありがとうございます」
「綾女姉ちゃん、指が痛い」
剣術を習っていた子が甘えてきた。
「どれ?見せてごらん」
「こら、まだ練習中だろう。戻って来い」
左近が呼ぶ。綾女は手で左近を制し、指を見た。軽い突き指。何もしなくても大丈夫なようだった。
「おまじないをするからね。痛いの痛いのとんでいけ」
指を撫でさすると、その子はとたんに元気になってにっこり笑った。
「ありがとう、お姉ちゃん。痛いの痛いの飛んでいけ、左近先生に飛んでいけ?」
「おいおい」
左近も苦笑していた。
- あの時代
- 50 view
この記事へのコメントはありません。